61.シャらラん言わしとる。

 大阪城の大広間のお客さんも、全員ニヤニヤにやついていました。


 そんな中、関白かんぱくはんと、小早川さんだけ、ボーッとしていました。

 関白かんぱくはんと、小早川さんのふたりだけ、ボケーッとしていました。


 ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんは、首をひねりながら言いました。


「いやぁー・・・わからんなぁ・・・」


 三成みつなりさんは、ニヤニヤしながらサイコロを拾って、ニヤニヤしながら関白かんぱくはんに渡して、ニヤニヤしながら言いました。


関白かんぱく殿は、本当に変わっておられですな」


 関白かんぱくはんは、首をひねりながらサイコロを受け取ると、すぐにサイコロを転がしました。


 サイコロは、てんてんと転がって、また、わたしの名前が書かれた目を出して止まりました。


 大阪城の大広間がざわつきました。


「おお! またソロリちゃんかー!!」


 ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんは、はしゃぎながら言いました。


 あかん・・・なに話そ。

 昨日は、おくにさんとダンスレッスン夜遅くまでやってたんで、さっきしゃべった、お布団の中でニヤニヤ考えて、イキってすべったネタしか仕込んでませんでした。


 あかん・・・ホンマ・・・どうしよ?

 考えてると、汗がダラダラ流れてきました。

 すかさず、三成みつなりさんが、これ以上ないくらい大きく見開いた目で、まるで、「どうか、落ち着くであろう?」と、言ってるような目で、ハンカチを差し出してくれました。


 わたしが、ハンカチでゴシゴシ顔拭いてると、策伝さくでんさんが助け舟を出してくれました。


「以前、私と、小早川こばやかわはんに話してくれた、干支かんし七度廻る未来の『修学旅行の話』とか、ええんちゃいます?(シャらラン)」


「あ、それでよかったら、話せます! 話します!」


 わたしは、策伝さくでんさんホンマ優しい思いました。

 策伝さくでんさんは、まるで立派なマネージャさんみたいに、わたしに困ったことがあったら、いっつも先回りして助けてくれます。策伝さくでんさんに言われたことは、今まで間違ったことないです。絶対、間違えたことないです。


 ・・・でもなんやろ、なんか変な違和感します。さっきの鈴の音、今までとちょっと違ってた。


 シャラン言うてた。


 ・・・気のせいやろか? 策伝さくでんさん、ちょっとだけ煩悩入っとる?

 あと、しゃべる前に小早川こばやかわさんのこと、チラッとみた気がするんやけど・・・気のせい?


 ・・・考えてもしゃーない。わたしは「笑ってたらどうにかなるかな」思いながら、ニコニコしながら話し始めることにしました。


「わたしがモトモトおったとこでは、修学旅行って行事があったんです。学生さんが旅行するんです。わたしも高校生のころ、日光のお寺に行きました」


 そう言うと、三成みつなりさんが興奮しながら言いました。


「なんと! 修学の為に日光のお寺に行ったのであるか! ソロリちゃんは、ひとかどの学者であったか!! 儒教じゅきょうを学んだのであろう?」


「・・・ええと」


 三成みつなりさんがちょっとなにいってるかわからんので「笑ったらどうにかなるかな?」って思いながらニコニコしてると、また、策伝さくでんさんが助け舟出してくれました。


干支かんし七度廻る未来では、観光で行くみたいですわ(シャラン)。

 なんでも、新幹線っちゅう、どえらい早馬があって、わずか半日で近畿から日光に着くらしいですわ(シャラン)」


 策伝さくでんさんの話に、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんが、めっちゃ食いつきました。


「半日で近畿から日光?? そら、めちゃくちゃ速いやんけ!!」


 興奮した関白かんぱくはんに、策伝さくでんさんは話を続けました。


「早馬だけやおまへん(シャン)。

 なんでも、飛行機っちゅう、空を飛べる、鉄製の鳥もあるみたいです。ぎょうさん人を載せて、わずか半刻で朝鮮につくらしいですわ(シャン)。」


 策伝さくでんさんの話に、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんが、めちゃ食いつきました。めっちゃ飛行機に食い付きました。


「朝鮮に半刻!? すごいやんか! めっちゃすごいやんか!! なあ、ソロリちゃん、その話、今話してくれ!!」


 関白かんぱくはんは、めっちゃ飛行機に食い付きました。

 山名やまなさん風に言ったら「めっちゃめっちゃ飛行機めっちゃ」です。


「・・・ええと」


 関白かんぱくはんの圧がちょっと強すぎるので、わたしは「笑ったらどうにかなるかな?」って思いながらニコニコしてると、また、策伝さくでんさんが助け舟出してくれました。


「ソロリちゃんは、干支かんし七度廻る未来より来られたお方(シン)。

 この場では、到底言えぬ事もぎょうさん知ってます(シン)。

 どうかどうか、この場でのお披露目はお控えいただきたく(シン)」


「やったら、ワシだけに話たらええ! ワシにだけに教えてくれたらええ!」


 関白かんぱくはんがあんまりに強引なので、わたしは「笑ってどうにかしてもらおう!」って思いながらニコニコしてると、またまた、策伝さくでんさんが助け舟出してくれました。


「はぁ・・・関白かんぱくはんにはかないまへんな(シ)。

 ソロリちゃん、お手間やけど、関白かんぱくはんにだけ、干支かんし七度廻る未来の話、してもらいます?(シ

 そうやなあ・・・まず手始めに、この後、なに時代が来るか教えてもらいます?(シ)」


「ええですよ」


 わたしは、ニコニコしながら席を立ちました。そして、関白かんぱくはんの、向かって左に座りました。


 ちょっと高くなっている関白はんの席に、関白かんぱくはんは、向かって右。わたしは、向かって左に座りました。


「もっと、近づいた方がよろしい()。

 絶対に、誰にも聞かれん様に、三成みつなりはんや、山名やまなはんにも聞こえん様に()。

 そうやなあ・・・()。

 関白かんぱくはんの、耳の匂いがげるくらい、近づいた方がええん違いますか?()」


「こんくらいですか?」


 わたしは、関白かんぱくはんの耳に、唇がくっつくくらい近づきました。

 関白かんぱくはんの横顔は、めっちゃデレデレしてました。鼻の下伸ばして、めっちゃデレデレしてました。


 策伝さんは言いました。少し息を整えてから言いました。


「では、話してんか(シャラン)。

 なに時代が来て(シャン)、

 誰が作って(シン)、

 何年続いたか(シ)、

 関白かんぱくはんに()、

 話してもらえます?()!!」


 わたしは、関白かんぱくはんの耳の匂いをぎながら、ソロリと言いました。


「(「・・・江戸時代が来ます・・・徳川家康とくがわいえやすさんが作った・・・江戸時代が・・・二百年以上続きます)」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る