第39話 机上の世界
家に帰り、俺は第三の謎の解決に向けて最後の調整に入った。
笹本の証言によって、証明はほぼ完成しつつあった。事前に組み立てていた論理がひっくり返されることもなく、むしろ正しいだろうという確信を持てるまでになった。
しかし、より完璧を求めるならばこの第三の謎においてはまだやれることがある。
もしも俺の推理が正しいとすると、この謎については「証人」がどこかにいるはずなのだ。
その候補となりそうな人物を、俺はすでにピックアップ済みだった。
帰宅してからすぐ、俺は質問のメッセージを作成してその人に送信した。クラスメイトではあったが中学生当時にそれほど仲が良かったわけでもなく、今まで連絡を取り合うことなんてまったくなかった。なのに、いきなり変なことを尋ねることになるので、個人的には相当勇気のいる行動だった。
それでも、少し前に成人式があったおかげか抵抗感はあまりなかった。あるいはここまで来たという確固たる事実が弱気な背中を後押ししてくれたのかもしれない。
そしてついさっき、その人物からの答えが返ってきた。
結果は予想していた通りだった。突然の連絡にもかかわらず、未翔の送別会の隠された真実をとても丁寧に証言してくれた。
これにより、第三の謎については解が出た。
さらに言えば、第一の謎と第二の謎についても考えはすでにまとまっている。
だから、あとはこれらの推理をみんなに向けて披露するだけだ。
でも、そのためには自らが構築した証明への理解度をより高めておく必要がある。
自分の考えを誰かに共有してもらうのは難しい。今回の場合、全員の納得が得られて初めて証明が完了となるからまだ油断はできない。
それに、全員の予定を再び合わせるのだって簡単なことではない。実際、一対一で会うのも結構大変だったのだ。それが四人になればいつになったら集まれるかわからない。今からみんなのスケジュールを調整していかなくてはならない。
とにかく、やるべきことはまだたくさん残っている。
中学時代のこと、未翔のこと。思い出しておきたいこともまだ山ほどある。
ふと、俺は机の上に目をやった。
証明を書いては消してを繰り返したレポート用紙、押し入れの奥で見つけた卒業アルバム、ボロボロの林間学校のしおり、購入してから聴きまくっているCD、笹本にもらった送別会の集合写真。
未来人の謎に取り組み始めてからの、俺のすべてがこの机上にある。
今日も俺はこの机の前に座って、未翔がいる世界に飛び込む。
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