第18話 林間学校二日目夜(カレー作り)
午後四時過ぎ、最後の班がグラウンドに到着し、すべての班がゴールできた。
達成感から来る興奮が生徒の間で冷めやらぬ中、先生方から気づいた点や感想が述べられ、ウォークラリーは終了。解散となった。
歩き疲れた足でバンガローに戻ることができたのは夕方五時近かった。一息つきたいところだったが、休む暇もなくすぐに次の予定が迫っていた。
二日目の夕食作り。メニューは全班共通でカレーだった。
日が徐々に暮れ始めて、辺り一帯は夜のキャンプ場へと移り変わっていった。炊事場に集まった生徒たちは、前日と同じように各班のメンバー同士で協力し合って夕飯を作り始めた。
一日目と違って料理の審査はなく、それもあってどの班も緩やかな雰囲気で自分たちが食べるオリジナルのカレー作りを楽しんでいた。そのときにはもうすでにキャンプ場での調理に慣れていたのもあるのだろう。周りを見渡してみても、悪戦苦闘して作業が滞っている班というのは見受けられなかった。
俺たちの班も決して効率は悪くなかった。前日と同じような役割分担で、俺と氷川が野菜などを切り、未翔と笹本が炒める作業やカレールー作りを行い、会澤は一人離れたかまどでご飯を炊いていた。
問題は会澤に元気がないことだった。
ウォークラリーでの失敗以降、バンガローに帰ってからも、夕食作りが始まってからも、会澤の表情に笑顔が戻ることはなかった。
「かまどのほうに行ってくる」
料理開始直後、会澤はそう言って飯盒を持ち去り、一人で勝手にかまどのところへ歩いていってしまった。
それ以上何も言わなかったが、会澤はただひたすら一人になりたかったのだと思う。
心の中を整理することができず、身体が反射的にみんなから離れようとして、後から口をついて出た役割によってその状況を作ったのだ。
俺はこのとき会澤に何か言葉をかけてあげることができなかった。適切な態度というのを測りかね、距離を置いて自分の作業に没頭することで正当性を得ようとしていた。
俺だけじゃなくて笹本も氷川も、そして未翔でさえも会澤の機嫌には一切触れようとせず、当たり障りのない最低限の言葉だけを交わして料理を作っていた。
そんな結果できたカレーは美味しくなかった。
レシピ通りに作ったはずだし、まがりなりにも一応前日の料理コンテストで三位を獲っていたわけだし、そんなに不味いものではなかったのかもしれない。
だけど、そのとき食べたカレーは具材もルーもご飯もすべてがバラバラで、味や食感を無視して無理やり一つの皿に盛りつけてあるような形だけの料理だと感じた。
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