7 サキュバス街
ということで私は翌日サキュバス街に来ていた。
サキュバス街は日本の夜の街という雰囲気だ。まあ、前世で女子学生だった私はそんなところに足を運んだことは無いのだけど。
「いっぱいサキュバスがいるなあ」
当然のごとく、サキュバス街には数多のサキュバスが混在している。
髪の毛の色がド派手は人が多く、カラフルな印象を受けた。
個性あるサキュバスたちが跋扈してるが、しかし特徴に関してはやはり皆同じようだった。
巻角、縦長の瞳孔、尖った耳、黒い羽根、黒い尻尾。
私にはそのうち黒い尻尾しか生えていなかった。
別にうらやましくなんてないけど、疎外感は何となく感じるよね。
サキュバスの尻尾は、強くしなやかで、先端が丸みを帯びておりハート型を形成するように
神経がたくさん通っているらしく、かなり細かい動きも再現できるのだから凄い。
特にその先端は、頑張れば箸さえ持てるんじゃないだろうかというくらいには動く。
尻尾は自由自在に動くのだけど、どちらかというと股下に向けてのほうが動きやすく感じた。
こう、お尻から太ももの間をすり抜けるような……。
ピトッ。
私の尻尾は、股下を通り越し、お腹に触れていた。
そこまで考えて、私は急に顔が熱くなった。
あ、これ。
ソレに使うのか。
私は考えるのをそこで止めた。
私だって前世では一応女子学生だったのだ。
もちろん思春期真っ只中の。
私は考えを振り切るように、歩を進めた。
基本的にお母さんからは、サキュバス街から向こうへは言ってはダメだと釘が刺されている。
サキュバス街の隣には、人間の街がある。
正確にいえば、人間の大きな街の一角にこのサキュバス街があると言ったふうだ。
サキュバスは、つまるところ魔族だ。
ひとたび人間の街で目撃されれば最悪討伐されるかもしれないらしい。
まあサキュバスに関してなら、あまり気にされないとは言っていたが(それでも周囲からは奇異の目で見られる)。
私は、人間の街に進む道には目もくれず、とある酒場に侵入した。
侵入と言っても、ただ正面から普通に店に入っただけだが。
「あら、かわいいお嬢ちゃんじゃなぁい」
「あの、見学してもいいですか」
「いいわよぉ。立派なサキュバスになれるようにしっかりとみてなさあい。なんなら、そのままここで実践していってもいいわよぉ」
「それは遠慮しておきます」
そう、サキュバスはどの店でも若いサキュバスを見学のために入れてくれたりするのだ。
それは、若いサキュバスの育成にもなるし、一部の
男って見られながらするの、昂奮するんだってさ。
知らんがな。
私は、酒場のテーブルに着く。
ここ「魅惑の樽」という店は、基本的に酒場主体となる。
入ってすぐに酒場があり、男にサキュバスが給仕をする形だ。
男は、気に入ったサキュバスを見つけると追加料金を払うことができる。
そうすると、さらに奥の部屋にサキュバスを連れ出せる。
つまり、ヤリ場というやつだ。
お酒を楽しんで、かわいい娘がいたらヤる。
それがこの店のウリなんだそうだ。
たまにサキュバスから誘われることもあるらしく、その際は半額だというものだから何名かの男はそれを待つためにずっと酒を飲んで待っていたりもする。
特に自分の顔に自身のある男がよくやるらしい。
まあサキュバスからすれば、人間の男なんてただのエサでしかないわけだから顔なんてどうでもいいんだけどね。
私は視線を巡らせる。
強そうな冒険者とか混じってないかなー。
私はここに、冒険者の話を聞きに来たのだ。
ただ遊びに来たわけじゃないんだよ!
そこで私は一人の男に視線がいった。
その男は、先ほどからあまり動かずじっとしている。
何かを待っている……?
その視線の先には奥のヤリ場があった。
その扉から別の男が出てきた。そいつはサキュバスの尻を触りながら、デレデレの表情で会計を済ませて店を後にした。
それを見た先ほどの男はスッと立ち上がると、その男を尾行するように店を出て行った。
なんだかやばそうな雰囲気を感じるぞ。
私は好奇心に耐え切れず、こっそりそのあとに続いたのだった。
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サキュバスの尻尾……アレに使えます。はい。余談だが、神経がたくさん通っているため、とても敏感。
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