3 魔法
火魔法……火を操る魔法。自分の火で自分が燃えることはそうそう無い。例外は何事にもある。
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――魔法。
この世界における物理法則の一つ。魔力を込めれば、それが現実世界へと干渉し具現化する。
目の前に炎の渦が出来上がる。
その炎の渦を発生させているのは、私の母さんだ。
「こうやって、魂の奥底から魔力を引き上げて、それを出す感じよ」
今私は母さんから魔法を教わっている。それは自衛のためでもあるし、サキュバスの能力を使う時にも必要なのだという。
しかし、いまいち母さんの説明だとわからない。
魂って何?
魔力って何?
前世の自分の身体との違和感を、私は探る。
えーと、えーと。
心の奥底、深く深く潜る。
私はようやく自分の根幹らしき部分に行きつく。
眩しいような温かいようなその部分を優しく包み込む。私はそれを少しだけ引っ張って、外へ出すイメージを思い浮かべる。
ボッ。
「きゃー、すごいじゃない! できたわよ、火魔法!」
目を開けると、私の手のひらの上には小さな炎が揺らめいていた。母さんがそれをみてはしゃいでいる。
おお、燃えてるじゃん。やばい、これ楽しい。不思議ー。
「そしたら、フラム。あなたはきっと火魔法の適正があるみたいね! よかったわ、サキュバスは火が使えないと大変だもの」
むふふと母さんが笑う。うーん、私としては、別にサキュバスになるつもりはないからどうでもいいんだけど、火が起こせるというのはとても重要だから、使えてよかった。
魔法とは、6大元素から構成される。火、水、土、風、光、闇。
それらへの適正は種族差と個体差があるらしい。適正がないと、魔法を覚えてもなかなかうまく使えないらしく、中にはそもそも使えないという場合がある。
「でねー、フラム。今火魔法を使ったじゃない? それを心の中でもう一回思い浮かべるの。そして文字として認識する。そうすると、魔法が『スキル化』するわ」
スキル化とは、魔法を使えるようになるために必須だという。今私は魔法で火を生み出したけど、それは単に火を出しただけ。これをうまく操作するためには火魔法というスキルを入手する必要がある。
そのスキルというのは、自分の中に『できるリスト』なるものを想像して、当てはめるだけでできるそう。と言っても、実際にできなければならないから、簡単なことではない。
『できるリスト』は母さんが命名したものだ。わかりにくいから『ステータス』とでも呼んでおこうかな。
私は、もう一度目をつむり、心の中で『ステータス』を作る。きっと今は空っぽだ。そこに火魔法を入れなきゃいけない。
再び心の奥底へ入る。すると、その『ステータス』は現れた。
しかし、なぜか既にいくつかスキルが入っていた。
「堕天」「淫魔」「飛翔」「痛覚低減」「耐寒」
おおう??
5個もスキルあるね。
とりあえず、さっき使えた火をイメージする。すると、『ステータス』に「火魔法」が追加された。
それだけで、今の私は、「火魔法」がどんなものなのか感覚的に理解できた。
目を開けた私は「火魔法」を発動させる。思った通り、私の手のひらで火が発生する。それを向かいにある的に向ける。的は母さんが用意してくれたカカシだ。
火をさらに充填、そして放つ。
思ったよりも出力が高かったのか、火は高速でカカシに衝突し3メートルほどの炎柱を発生させた。燃える物がなくなったのか、火はすぐに消え、あとには炭になったボロクズが残るのみとなった。
「わあ、すごいねフラム。まだ、火魔法を少し教えただけだったのにもう使いこなせるだなんて! 貴女には魔法の才能があるわ。立派なサキュバスになれるのよ!」
感極まった母さんが私を抱きしめる。だから、サキュバスにはならないって言ってんでしょ。いや、言ってないけど。
私は作り笑いを浮かべる。
「今日は魔法が使えることが分かっただけで良しにしましょ。本来は、魔法がどういったものなのか教えるだけだったのに、一気に予定が狂ったわ。明日はもうちょっと応用効かせたことを教えたいから、今日は少し休んで魔力を回復させておきましょう」
母さんはそういうと、家の中に戻っていった。私も、そのあとに続いた。
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ファイア……フラムが使った「火魔法」の初級魔法。手のひらから炎を放射し、対象を燃やす。魔力を込めた分だけよく燃える。出力を抑えれば焚火にも使えるため、重宝される。
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