悪役?令嬢を召喚したけど、可愛すぎて色々無理
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第一章 召喚された悪役?令嬢
第1話 嵐の前
目に見えてわかるほどの異変が起きたわけでもない。王子の、寝覚めが悪いだけだ。最近何故か婚約者が跡形も無く、消えてしまう夢を見るのだ。夢だとはにわかに信じられないぐらい。仲は良すぎることはないが、程よい距離の愛らしく、最も信頼できる女性のアンネリーゼ。今後は、共に人生を歩んで行く筈の大切な女性が。目の前で何回も消えてしまう。
(ノイローゼになりそうだ…)
水を飲んで、汗を拭く。気づけば寝汗が凄いことになっていた。思いおこせばこの不吉な夢は、新しい聖女と呼ばれる女性が現れてから頻繁に見るようになった。
彼女は、平民だが聖女を名乗り、予知をし、人々を癒す。王子は、この女性が苦手だった。妙に馴れ馴れしく、アンネリーゼに偉そうに接する。アンネリーゼは、相手が誰でも敬意を持って接するが、彼女はそうではない。
(苦手というよりは…侮蔑か)
平民だから、貴族の常識に疎いのだと言う。ならば、平民でも恐れ多くてできないだろう、と言うことを彼女がするのは何なのだ。
勝手に王族の居住区域に入り込み、王宮内で許可なく魔法を発動し、王子や陛下、王弟などに色目を使う。ただの小娘が。王宮の使用人を勝手に使い、我儘に振る舞う。
聖女と言うのは、こんな人間でも名乗れる程の恥の多いものなのか。すっかり、眠れなくなったベッドの中で、アンネリーゼを想う。
夜が明けて、朝になったらアンネリーゼに会える。会えたら、彼女を全力で守ることを誓う。
聖女が王宮内で魔法を発動させてから、王宮内にいる者達、全員に、魔道具が配られた。精神的に操られることがないように。
王子を含めた王族は、皆、聖女を信用していない。力のあるなしに関わらず、問題をおこしてばかりの聖女が目障りで仕方がなかった。
聖女は、王宮内で保護していない。教会で、保護してもらってはいるが、我儘で、負担が大きいようだ。それでも、王宮内での保護はできない相談だ。それこそ、何故か聖女が一方的に、嫌っているアンネリーゼに被害が及びかねない。
(リーゼは私が守る)
王子はこの日、自分の想いが及ばなかったことを後悔し続けることになるとは、まだ思ってもいなかった。
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