第28話
入学初日。
とうとうこの日が来たか……。
俺は小綺麗に見える衣服に身を包み、お手製のリュックを背負うと愛馬(ノーザントースト号)に乗り、王立学院に向かった。
学院が近くなるにつれ、同じぐらいの年齢の学生が道に増えてきた。
実は、俺はこの時点ですでに嫌な予感がしてきた。
初日からサボろうかな……。
そんな考えが頭をよぎった。
なんせ、俺の周りにいる多数の学生は全て……
制服を着ているのだ。
いきなりトラップ発動(笑)。
ないわ~。
クソ家庭の使用人、誰か教えてくれよ~。
しかも、みんな徒歩通学で馬に乗ってないし。
ひょっとして、乗馬通学はNGかな?
帰るか……。
だがしかし、初日からサボりというのは……。
とはいえ、ドレスコードから逸脱というのは流石に……。
そんな感じで逡巡していると、王立学院の正門が見えてきた。
あの正門の前で右に折れて、一般ピープルのフリでもして帰宅するか。
そう俺が思いながら、右に折れるタイミングを見計らっていたときだった。
「あっ!!!」
えっ。
何者かが声をあげたため、俺は動揺してしまい、右に折れるタイミングを逃してしまい……、
正門にそのままストレートに入ってしまった。
俺は、心のなかでは混乱の極みだった。
サボる方向に心が傾いていただけに、なぜこんなことになってしまったのか理解が追い付かない。
だが、ここでそれを悟られてはならない。
ここまできて引き返すのも癪だし、今日は出席かなぁ。
そう考えた俺は、いたって平然とした風で馬を進め、一年一組の教室に向かったのだった……。
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一年一組で指定されている座席に、俺は憮然とした表情で座った。
周りの生徒は皆が制服を着ており、俺を好奇の目で見てくる。
だが、持ち前のメンタルタフネスで、俺はそうした視線を気にしない。
周りは相当ザワついているが、そんなので俺は動揺しない。
嘘です。
正直、帰宅したくてしょうがないです。
はやく俺に早退させてください。
もう、俺のHPはゼロよ!
俺がギリギリ冷静を装っていると、前の扉が開き、女性が入ってきた。
スーツっぽい服装に身を包んだ大人の女性で、茶髪をシニヨンにまとめた出来る女。そんな印象。
教壇の前に立ち、教室内を見回し、ギョッとして目を俺に止める。
俺は、女性教師の視線を真っ向からガンをつけて睨み返した。
ここで、俺が非を認めてしまうと、なんかダサい感じになってしまうからな……。
せめて制服着るぐらいの知恵をつけてから入学しろ、とか思われてそう。
でも、まるで俺が正しいかの如く、激しく睨み返してしまう。
アホなのは俺なんですけどね……。
しばし、俺と女性教師は目を合わせていたが、最後には彼女が視線を逸らした。
……勝った……。
「今日から皆さんの担任となるイライザです。よろしくお願いします」
何事もなかったかのように自己紹介をし、彼女は続けた。
「入学式の開始まで少し時間がありますので、さっそくですが、皆さんには自己紹介をしてもらおうと思います」
そう彼女は言った。
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