第26話
王立学院に通うために王都に上京してきた俺は、早速、王都観光に繰り出した。
王都内にはさまざまな観光名所があるが、俺は街の中心部に位置する大聖堂を一番最初に見ることにした。
大聖堂についた俺は、その荘厳さと豪奢さに度肝を抜かれた。
ゴシック建築風といえばいいのだろうか。
尖った大きなアーチに、重工な 石造りの壁。少ない窓からはステンドグラスで採光しており、その神秘的な内部をより神聖なものに感じさせる。
案内に沿って内部を進むと、ほどなくして三つの聖像が並べられている大広間にたどり着いた。
中心部に位置するのは、運命神ムクカ。
王国の国教であるムクカ聖教の中核を為す女性神であり、すべての聖句はこの神に捧げるものと言っても過言ではない。
その表情や服装は丁寧に彫り込まれており、神に相応しい美を表現しているように思う。
大聖堂を訪れた観光客は、次から次へと首を垂れて祈りをささげており、俺も膝をついて祈りをささげた。
次に向かって、左側に位置するのが現国王のリムカッサーナ王の像。
運命神ムクカの子にして現国王。
その威武を示すことを目的とした像だけあり、武を誇示するかの風格には圧倒されてしまう。
なお、一点補足いたしますと、この国の国教では王権神授説を採用しております……。
国王に唾をはいたら、その瞬間に神に逆らったことになります。はい。
だが、最後の三つ目の像に目をやり、俺は思わずつぶやいてしまった。
「なぜ、お前がここにいる……」
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俺は、その像をみた瞬間に声を出さざるをえなかった。
「なぜ、お前がここにいる……」
そこに立っていたのは、前世の俺に酷似した像だった。
この国には居ない東洋風の彫の浅い、単調な顔。
前世の俺が、日常的に鏡で見ていたブサイク。
モブキャラランキングではナンバーワン。そんな感じ。
その右手には剣を、その左手には小盾を携えている。
なんで身に着けているものは西洋風なんですか。
もろ東洋人のくせに。
ねえ、教えてよ。
なんで、お前(俺)がそこにおるのん。
俺は、三つ目の聖像の前に佇み、ただ茫然とするしかなかった。
何時間も見上げていた。
時間だけが過ぎていく。
「その像が気になりますか。随分と熱心に祈りをささげておいでですね」
そんな俺に、聖職者と思しき男が声をかけてきたのだった。
「ハマーク=リーノと申します。今後ともよろしくお願いします」
その聖職者は、そう名乗った。
■■あとがき■■
2020.12.28
本作は読者参加型となります。
今後、日ごろから応援してくださる皆様に似たキャラクター名が登場することがございますが、ご容赦いただけますと幸いです。
また、今回、ご登場いただいた「nemurisakana」様及び「浜栗之助」様には、この場を借りて御礼申し上げます。
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