第2話

父が後妻を連れてきた。


「スーザマ侯爵家の長女、バイオリスと申します。今後は、義理とはいえ母となります。末永くお付き合いをお願いいたします」


後妻はバイオリスという名前だった。

とりあえず、俺は、心のなかでバイ子と呼ぶことにした。

まぁ、現実世界で呼びかけるときには「おかあさま」と呼ばなければいけないわけだが。


父とバイ子の縁談は、彼らにとっては非常にメリットのあるものだった。

既出だが、俺の父は成り上がり者だ。

そんな彼にとっては、由緒正しさや、貴族界での後ろ盾というのは特に重要だった。

その点、スーザマ家は、それなりの派閥のなかでそれなりの地位を占めており、代々侯爵を担ってきた名家だ。


そんなわけで、バイ子がクソ家庭にインしてきたのだった。


バイ子は「血のつながりがなくとも、親としての責務を果たしたいと思います」などと言うものの。

血のつながっていない子供の面倒なんて、見る気がないわけですわ。


まぁ、そりゃそうだ。

俺が彼女の立場でも、前妻の子(しかも嫡男)なんて目障りでしょうがない。


それからしばらくの間、俺は気まずい思いをしながら、家族の食卓を共にする日々が続いた。


まぁ、その間、父とバイ子は当然のようにイチャコラしてたわけでありまして。

ほどなくして、義母バイ子の懐妊が明らかにされた。


『父の唯一の子供』という俺の地位が危うくなるタイミングが、早くも訪れたのだった。

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