第96話一旦、上層へ
助け出した青年、パームと言う名前らしい、そのパームを雇っていた冒険者に付いて、村を調べた結果全滅していた事が分かった。
サヴェジゴブリンの集落の中心部に石をくり抜いて作った祠のような物があり、そこに収められている奇妙な石像に供えられるように首が置かれていた。
パームいわく、捕まってからひと月は経ってないと思うと言っていたけど、既に冒険者の首は干し首にされている所を見ると、それ以上たっているのかもしれない。
それにしても干し首って、確か宗教的な感じで、敵の霊魂を束縛することで制作者への奉仕を強制するものって日本の博物館の説明書きに書いてあったけど、供えられてたって事はサヴェジゴブリンも何かしらを信仰する風習があったのか?
いや、あったんだろうな…、だって祠に変な石像が安置されてるし。
「それにしても良く生かされてたわね? まあ何か知らの儀式を行う為に行かされてた可能性もあるけど」
カトレアがそう言うと自分達がこの集落に来なかったらどうなっていたか想像したのかブルっと震え、ここを離れたそうにしている。
「とりあえず、地下にあった物の中に冒険者証が幾つかあったし、あらかた回収したから下層に向かう?」
「そうね、メレンをもっと採取したかったけど、ここを燃やしたらとりあえず一旦29層にあるマインに戻りましょ。 下層に行くって言ったけど、パームを守りながら下層に行くのも手間だし」
あ~、これカトレアさん絶対にメレンの採取を諦めて無い感じだ…。
もっともらしい事言ってるけど、38階層に村があるから、下層に行った方が早いのに一旦戻るってもう一度ここに来て採取するつもりだ…。
とは言えそれは口に出さない!!
出したら絶対に否定された上で今後の訓練がハードになる気がする。
上層のマインの町に戻ると聞いてパームの顔が明るくなるも、火魔法でサヴェジゴブリンの集落に火を放って回っている光景を見て、そこまでしなくてもって感じで若干引いてる。
いやそこまでする必要あるんだよ。
同じような犠牲者を出さない為に。
その後、燃える集落をしり目に、階層の入り口に向かう。
長期間牢屋に閉じ込められ体力が落ちているようでパームは息も絶え絶えだけど、この階層に居るサヴェジゴブリンが怖いのか、肩で息をしながら文句を言わずついて来る。
途中、メレンの群生地があったので採取をしている間、大の字になって横たわってたけど、その後また進み始めると歯を食いしばりながらも遅れないように歩いてる。
傍から見たら、凄く強行軍をしてるように見えるんだろうけど結構ペース落として歩いているからね。
本来ならもう階層の入り口まで到着してる頃だし、この森林で一晩明かすより階層の入り口で一晩明かした方が安全なんだからね。
やっぱり人間、食料も少なくされ、狭い所に長期間閉じ込められると体力が大幅に低下するんだな…。
同じような状況にならないのが一番だけど、もしどうなった際の対策とかを考えておいた方がいいな。
それにしても体力が落ちた人のペースで進むとどうしても移動速度が遅くなる。
29階層のマインに到着したのは34層を出発して4日後だった。
行きは2日で到着したのに4日もかかってしまた…。
マインの町に冒険者ギルドは無いものの、冒険者が集まる酒場が出張所のようになっている為、そこにパームを連れていき、受付っぽい人に事情を説明し、回収してきたギルドカードを渡す。
「全部で9枚ですか…、一番古いのは30数年前に登録した人の物ですね。 他にはなにかありましたか?」
「まあ武器や防具類ぐらいですね、ポーションとかの類は無かったですし…、あっ、あとなんかサヴェジゴブリンの集落に祠っぽいのがあってよくわからない石像が祀ってありました」
「石像ですか? もしお持ちなら拝見しても?」
受付の人も魔物が崇めてたと思われる石像に興味があるようなのでアイテムBOXから石像を出して見せる。
「う~ん、やはり初めて見ますね…、何かの神を象ったりしているかと思ったのですが…」
「魔物が崇めている神?」
「それはわかりません、魔物が神を崇めるなんて聞いた事ないですから」
そう言い受付の人は石像を返しつつ、今後について説明を始めた。
やはりここにはギルド機能は無く、冒険者に対してのアドバイスや情報収集などを担っているだけらしく、回収した冒険者は迷宮の外にあるギルドに届けないと報奨金は出ないらしい。
ただ回収した品については、魔物が収集したものなので自分たちの好きにしていいとの事で特段パダーリン迷宮ルールと言うのはなく、通常通りと言えば通常通りだ。
ただ、今回救出したパームに関しての扱いに関して、本来は雇った冒険者が報酬や補償をするけど、雇用者死亡でかつ何も持っていない状態と言う事もあり救出した自分たちで面倒を見ろとの事だ。
何故?って聞くも、パームは冒険者ギルドに所属しておらず、ポーター登録しているだけの為、冒険者ギルドの管轄外との事だった。
うん、どうしよう…。
ギルド管轄外と聞いてどうしたものかと悩む自分の顔をパームが心配そうにのぞき込む。
「カツヒコ、とりあえず集落に有った物を売れば多少のお金にはなるからそれ渡して後は自分でどうにかさせればいいのよ」
カトレアがごもっともな事を言うも、なんとなく可哀そうな気もする。
ただ迷宮の外まで連れていく義理もないし…。
「金貨2枚あれば何とかなるよね」
そう言い、パームに金貨2枚渡しここで別れようとすると、パームが泣きついてきた。
いや、男に泣きつかれても嬉しくないんだけど!!
これが可愛い女の子なら一考どころか二考でも三考でもするけど、男じゃ…。
「待ってくれ!! お礼はする。 だから俺を迷宮の外まで連れて行ってくれ!!」
「お礼って言われても、着の身着のままで何も持ってないから出来ないでしょ?」
そう言うとパームは少し考えこんでから自分の事について話し出した。
いや、もっと早くに話せよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます