第89話パダーリン迷宮

鮮魚の卸売りをしてる商店には、明日、明後日、明々後日の早朝に鮮魚を各一箱づつ売りに行き、その後は迷宮から戻って来たら販売するという事で最終的に話は付いた。

店主は迷宮探索を暫く先延ばしにして欲しいと行って来たけど、1日各1箱だと捌ききるのに100日かかってしまうのでそれは丁重にお断りした。


その後、市場に戻り珍しい物は無いか見て周り、幾つかの香辛料と果物を購入し宿に戻る。

ルイーズさんもリーズもまだ帰って来ていない為、昨日ギルドで買った迷宮上層部の地図を見ながらカトレアとルートなどを確認する。


「じゃあとりあえず明日は5階層まで最短ルートで行き迷宮がどんな感じか確認して帰って来るって事で良いんだよね?」

「そうね、迷宮をくまなく探索して宝箱を探しても上層階だと大したものは無いでしょうし、何より上層階は低ランク冒険者が多そうだから最短ルートで5階層まで行って帰って来ましょう。 地図だと10階層までは遺構型ダンジョンで、村があるのは自然型になっている11階層だから、明日だけで洞窟型や自然型の経験してみる事も出来ないし」


そう言い各階層ごとの地図を眺めながらカトレアがため息をつく。

実際自分は遺構型である墳墓のダンジョンしか経験した事ないからカトレア的には本格的に迷宮攻略をする前に上層階で体験をさせておきたかったらしい。

個人的には10階層の階層主として出現するゴブリンウォーリアがどの程度の強さか戦ってみたかったんだけど、10階層まで最短ルートで行って帰ると夕方までには戻ってこれないうえ、10階層の階層主に関しては11階層の村に居る冒険者が毎日、日付が替わり出現した直後に倒してしまうらしいので戦うのなら日付が替わる前から待機し日付が替わった瞬間に階層主の間に踏み込まないとダメらしい。

ギルドの話では、専門に狙ってる冒険者が何組も居るらしいから10階層の階層主と戦えること自体がレアらしいし…。


それにしても、何で10階層ごとに階層主が居るんだろう?

ダンジョンや迷宮が産まれる謎と同じく階層主が倒されても日付が替わると復活するのも謎だ…。


そうこうして明日の打ち合わせをしてるとリーズが買い物袋を両手に提げて帰って来、しばらくしてほろ酔いのルイーズさんも帰って来た。


全員が揃ったので宿に併設されたレストランで夕食をしながら各自が仕入れた情報を交換する。

リーズが両手に買い物袋を提げて帰ってきたが、あの袋の中身は自分の趣味ではなく、迷宮で取れたもので出来た品々らしく、迷宮探索時に素材として回収し高く売れる物を見本として買って来たらしい。

中でも迷宮中層に居るジャイアントスパイダーの糸は1つの巣に使われている糸を棒などで絡め取って持って帰るだけで大体金貨5枚~8枚と言う金額で取引されたりしてるらしい。

糸を絡め取った棒ごと鍋で茹でると、粘着性が失われるらしくそれを紡いだ糸が高級品として流通しているらしい。

他にも高値で買取される魔獣や魔獣の素材や肉、珍しい薬草と綺麗な水をビンに入れた万能ポーションなどがあった。

それにしてもビンに薬草と綺麗な水を入れて10日程寝かしたら万能ポーションになるって錬金術師要らないじゃん!!

まあDランクポーション程度の効果らしいからCランク以上のポーションが作れる錬金術師は困らないだろうけど…。

ただ万能ってとこが高値で取引される理由なんだろうな…。


そしてルイーズさんがギルドの酒場で酒を飲みながら仕入れて来た情報は、主に迷宮の事で、どの階層にどんな魔獣や魔物が出るかや階層により得られる物を聞いて来たとの事だった。

とはいえ、ギルドの酒場に居た冒険者は殆どが上層階を主に探索している人達ばかりだったようでほとんどが上層階の情報ばかりであまり役には立たなかった。

どうやら、中層や中層に近い場所まで探索が出来る冒険者は殆どが迷宮内の町や村を拠点とし、素材が溜まったら外にでてギルドに換金だけしに来るようで上層階を主に探索する冒険者とあまり交流がないらしい。

ただそんな迷宮に潜り続ける冒険者も地上の街に長期滞在する時があるみたいだけど、大体がオークションに出品するような物が手に入った時か武器の新調の時が殆どらしい。

う~ん、そんなに迷宮内の町は居心地がいいのか?

迷宮内の町がどんな所か興味が湧いて来るな…。


翌日、朝一で鮮魚を売りに行き、その足で迷宮に向かう。

迷宮の入り口周辺には2重の壁が築かれ迷宮から魔物が出てきても街に被害が出ないよう、完全武装の衛兵が常に常駐している。


迷宮を囲む壁に設置された門をくぐり、入場受付っぽい所でパーティーの人数、メンバーの名前や探索予定日程などを記入した。

どうやら出入りを管理し未帰還者の数で迷宮内の異変を少しでも早く知ろうとしているような気がする。

なんか他にも理由はありそうだけど…。


受付で記入を済ませ、迷宮に足を踏み入れるとそこは墳墓のダンジョン同様に石造りの通路が広がる。

それにしても何でダンジョンとか迷宮って明るいんだろう。

普通は日の光が入らないから真っ暗な気がするんだけど…。

迷宮の最深部から流れ出る魔力の影響なのかな。

こればっかりはカトレアも何故なのかは知らないとの事だった。


元ダンジョンの主でも知らないことあるんだな…。

まあ100階層に閉じ込められてて調査とかする事は出来なかったから仕方ないか。


そう思いながら通路を進んで行くと、とても懐かしい敵が目の前に現れた。

うん、初心に戻り木の棒で頭部を破壊しよう!!

スケルトン撲殺、久々だ~~。

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