第86話迷宮都市へ

シールラの街は港があり交易拠点である点と漁業が盛んという事も相まって今まで行った街と比べると活気に溢れていた。


交易品を取り扱う店が立ち並ぶ区画を歩くと、綺麗な色の布や服、宝石が散りばめられた宝飾類、各地から集められた香辛料等々が所狭しと並べられ、各地から仕入れに来たであろう商人達がそこら中で値段交渉などをしている。


カトレアと交易品を扱う区画を見て周り、片っ端から調味料や香辛料を大人買いする。

因みに何故カトレアと2人かと言うと、ルイーズさんは情報収集の為と言いギルドの酒場に向かい、リーズは生活用品や服など、交易品ではなく普通の品が売られている店に行きたいという事でそれそれ別行動になっている。

カトレアも別行動しても良かったのに、なんで自分について来たんだろう?


そして香辛料や調味料などを買い、海産物が売られている区画に足を踏み入れると、そこは交易品を扱う区画と異なり、しゃがれた大声が飛び交う賑やかな場所だった。

なんか世界は変わっても市場の雰囲気は変わらないんだな…。


海産物が並べられている店を見て周ると、見た事も無い魚や貝、エビやカニが並べられている。

とは言え何故か日本で見た事のある魚や貝なども並べられているので偶然なのか、進化の過程で同じ形になったのか、などと疑問を覚えた。

とは言え、どの店も色々な海産物を幅広く店に並べている為、どうしても量が足りない為、人の良さそうな夫婦でやっている店に依頼をし、欲しい魚や貝、エビ、カニなどを大量に仕入れてもらいそれを購入する事になった。

ただどうしても仕入れの為のお金が足りないとの事で先払いと言う形にはなったものの翌日にはしっかりと依頼の海産物を仕入れて来てくれた。

その後も毎日、海産物を買い付けアイテムBOXへ収納し続けると、周囲の店からも今日はこれを大量に仕入れたから買ってくれなどと声をかけられるようになってしまった。

まあ、まとまった量があれば喜んで買いますけどね。


ただ、この世界で昆布やワカメなど海藻類を食べる習慣がない為かどこの店にも売ってなかったのがショックだった。

だって味噌っぽい調味料が手に入ったから、昆布で出汁を採ってワカメを具にしたみそ汁が飲めると思ったのに…。


そして、出発当日、早朝に海産物を扱う区画に足を運び、商品を購入し、今からシールラから迷宮都市へ向かうから明日以降大量仕入れをしないように注意を促した後、出発する。


シールラから迷宮都市パダーリンまでは徒歩で7日、途中村々に泊まりつつ情報収集をすると、迷宮都市パダーリンの情報が意外と多く手に入った。


どうやらシールラのギルドに居る人は海に生きる男の集まりと言った感じであまり迷宮に興味が無い人達が多かった為、得られる情報も迷宮都市とシールラを行き来している商人などから聞いた話が主流だったようで、迷宮都市に近づくにつれ様々な情報が耳に入って来た。


どうやら迷宮都市はその名の通り、迷宮の入り口を中心に発展した街で火の国と光の国の国境からも近い為、水の国のみならず火の国、光の国、両国から冒険者が集まり、それを相手にする商人や職人、そして春を売るお姉さんも多数居るらしい。

村で聞いた話では、武器や防具を作る職人も魔道具を作る職人も恐らく6国にあるどの街よりも高水準じゃないかとの事だ。

そして迷宮で発見される魔道具も珍しい物が多い為、それを買い付ける商人の為にオークションまで開かれているらしい。


「オークションね~、迷宮産じゃないけど私の部屋に有った死蔵魔道具をオークションに出したらお金に困る事は無さそうね」

「確かに、死蔵魔道具には事欠かないからね…。 ただ現状お金には困ってないし、魔道具を売る前にキラーストーンビーのハチミツがまだ大量にあるから暫くお金に困る状況にはなりそうにないけど…」


「そう? 甘味は重要よ? シールラで砂糖は香辛料より高価だったじゃない」

「まあ確かに高価だったけど、まだハチミツ相当数有るよ? 多分毎日パンにハチミツ塗って食べても消費しきれないよ?」


「無くなならないとかの問題じゃないのよ。 無くならない量を持っていて、いつでも食べたいときに食べられるってのが重要なの」


女の子の甘味にかける情熱はよく分からない…。

いや、異世界だからか…。

日本に居た時はコンビニに行けば色々なお菓子が有って食べたいときに食べたいものを好きなだけ食べられたけど、この世界ではそうもいかないから食というか希少品に対する執着が凄いんだ。

うん、そういう事にしよう。


後、迷宮都市の情報で知った事としては自分達には関係ないけどポーターを請け負う事を生業にしている人が多く、ポーターを守るための法律まであるらしい。


昔は迷宮の魔物から逃げる際に戦いに向いていないポーターを囮にして逃げる冒険者が多く居たらしくポーターの未帰還率が高く、また迷宮内で目撃者も居ない為、ポーターを囮にした冒険者を裁く事が出来なかったけど、現在では迷宮に入る前にはパーティー及びメンバー名を記入をした紙を受付に出し、帰還時にメンバーが欠けていないかの確認があるらしい。

そしてポーターが欠けていた場合はペナルティーとして慰謝料をギルドに支払い、ギルドが遺族にお金を届けるシステムになっているとの事だ。


「それにしても慰謝料は一律金貨10枚って安いのか高いのか…」

「そうね、安いわね。 ただ迷宮の中に町や村もあるから途中で居なくなり慰謝料を家族に届けさせたりなんて不正なんかが多くて金貨10枚になったんじゃない?」


なんかポーターについてのシステムが全く分からない。

実際、迷宮内の町や村でポーターを雇った場合はペナルティー対象外だし、結局あまり意味がないような気がする。


「どちらにせよポーターを雇う事は無いし自分達には関係ない情報だね」

そう言いながら迷宮都市までの道を進む。


今日の内には到着するだろうけど、いい宿あるといいな…。

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