第52話ストーンキラービー

ハチミツ採取と聞いて、いまいちピンと来ていない自分にルイーズさんがストーンキラービーとハチミツについて説明をしてくれた。


どうやらストーンキラービーとは、岩場に巣を作るハチで大きさは10歳ぐらいの子供程の大きさらしい。

そして食性に関しては、成虫が肉食、幼虫がハチミツとの事。

そしてストーンキラービーの特徴としては巣を作るのに適した大きな岩、それも10メートルとかのサイズではなく100メートル以上ある大岩や岩山、断崖を働きバチが顎で削り穴を掘り、その奥に巣を作るとの事で巣の大きさも大きい物では4~50メートル程、小さい物でも10メートル以上はあるらしい。


そして成虫の食性が肉食という事もあり、巣の周辺どころか相当遠くまで獲物を探しに行くらしく、商人や旅人、そして森で活動している冒険者なども餌食になるとの事だが、その原因は、ストーンキラービーは基本的に4~5匹で狩りをし自分達よりも大きい得物も協力して持ち帰るからだそうだ。

そして、何より恐ろしいのは毒性が強く一刺しでオーガも仕留める程の毒がある針、そして岩を削るほど発達した顎、しかも顎にも麻痺毒があるとの事で、少し噛まれたりしただけでも数分もすれば麻痺で身体が動かなくなるらしい。


しかし、そのストーンキラービーが幼虫を育てるために集めた蜜はなぜか麻痺毒も無く、それでいて普通のハチミツと比べ香りも良く甘みが強く滋養強壮効果もあり、ローヤルゼリーともなると特に希少な上、食べると何でも3日3晩男性のモノが役にたつつようになるらしく子孫繁栄につながるとして王族や貴族、富豪などが市場に出回ると大金を払いこぞって買おうとするらしい。

まあ中には下半身にあるのが豆鉄砲の人なんかは3日3晩膨張させることで少しでもサイズアップをと買い求める人も居るみたいだけど…。


3日3晩って…、昼間も元気な状態でテントを張ってたら変態扱いされ無いのかな…。

ローヤルゼリーを食べた後で街を歩いて女の子に声でもかけようならその瞬間に変質者確定じゃない?

てか、下着どころかズボンにまで染み出てそうだけど…。


「それでだ、そのストーンキラービーの巣がキャールの街から3日程の所にあるからそれを採取する依頼だ」


ルイーズさんがストーンキラービーだけでなくハチミツやローヤルゼリーの効果まで説明してくれたので思考が変な方向に行っていたが、説明が終わり、よく考えるとそこまで危険を冒してまで採取する物なのか疑問に思えて来る。


「てか、超危険な依頼じゃないですか!!! それで一樽金貨20枚って安くない?」


危険度と報酬が釣り合っていないと抗議の声を上げるも、カトレアは気にした様子もなく、平然としている。


「カツヒコ、一応聞いておくが、一樽ってどの程度の大きさだと思ってるんだ?」

「樽って事だから、酒場にある酒樽ぐらい?」


そう言って、酒場に置かれた1メール以上はあるエールの樽を指さすとルイーズさんもカトレアも笑いだした。


「樽って言っても大きさはさまざまだ、あのエールが入っている大樽は大人が2人がかりで運ぶようなものだが、今回採取に使う樽はあそこにあるサイズの樽だ」


ルイーズさんがそう言って指を刺した先にある樽は高さが約30センチぐらいの樽が置かれている。


「あ~、あのサイズなら…、いや、サイズは良いとして、危険なのは変わらないでしょ!! オーガを一刺しで殺す毒持ってて、噛まれても麻痺毒って、巣に近づくことも出来ないでしょ!!!」

「はぁ~、カツヒコ、あなた何の為に魔纏を覚えてるの? 要は魔纏で針も顎も防げばいいだけじゃない」


カトレアはそう言って呆れた顔をしているけど、ルイーズさんはそんなカトレアの言葉に呆れている。


「「いや、それは無理でしょ(だろ)!!」」

うん、ルイーズさんとハモった…。

いやそんなことできるのはカトレアぐらいだからね…さも当然と言った顔で言える人は普通居ないからね。


「まあ、カトレアの方法は置いておいて、採取方法は2つある。 一つは巣から滴り岩を流れ落ちるハチミツを採取する方法、もう一つは相手を眠らす魔法、または眠り草を焚いてストーンキラービーを眠らせて採取する方法だ。 とは言え、岩を流れ落ちるハチミツは不純物が混じっているから価値も落ちるけどな」

「そんな質の悪い物を採取しても意味無いじゃない! 採取するなら最高品質の物を採取するべきよ!!」


ルイーズさんの説明に、カトレアは巣から直接採取するべきと主張する。

それに対し、ルイーズさんもうなずいて、依頼書を見ながら条件の書かれた場所を指で示す。


「実際のところ、流れ落ちるハチミツは専門の奴が定期的に採取してるから特に求められても居ないし、この依頼は巣から直接採取したものと条件があるんだよ。 まあハチミツを求めて獣や魔獣もハチミツを舐めに来るから条件が良ければそこまで危険ではない」


う~ん、条件が良ければって、運任せ?

「でも、針には毒があって、顎は麻痺毒があるんでしょ? 一応解毒魔法は使えるけどどこまで効果があるかは分からないし、そもそも解毒魔法で解毒できても大きなハチの針を刺されただけで致命傷になりかねなくない?」

「まあそうなるな、だから夜に採取をする。 奴らは夜になると巣に戻って寝るからな」


ルイーズさんは完璧だという顔で夜なら比較的安全にハチミツを採取できると自信満々だ。

まあハチって夜は飛び回らないからね…。

それにしても、睡眠魔法って使えるのかどうかが分からない。

眠り草を焚いてから採取だと、ハチミツまで燻されそうだし…。


「カトレア、睡眠の魔法ってどんな魔法? 自分も使える?」

「そうね、多分カツヒコのギフトである器用貧乏の効果で簡単に覚えられるんじゃない? ただ睡眠魔法は浄化魔法と同じで、近距離にしか効果ないわよ、あまり役に立たない魔法扱いされてるぐらいだし」


浄化魔法と同じで近距離…。

じゃあその睡眠魔法をスケルトンに使った浄化魔法のようにスプレーのように吹き付けたら…。


うん、まずは睡眠魔法を覚えよう!!!

スプレーみたいに噴射出来れば全力で睡眠魔法を巣に噴射し完全に眠らせたうえでハチミツを採取できそうだし。


そうと決まれば睡眠魔法の練習だ!!

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