第44話魔獣討伐依頼

「ムライム草21個、確かに受け取りました、依頼は1個だったので、それ以外は依頼と同じ銀貨5枚にてギルドで買い取らせて頂きます。 それとマージバイパー6匹、こちらも銀貨5枚で買い取らせて頂きますので合計で金貨13枚と銀貨5枚、合計で13500レンになります」


そう言って笑顔でトレーに乗せた金貨と銀貨を差し出すギルドの受付嬢のセーレさん、うさ耳の獣人さんで歳は多分18~9歳ぐらいかな。

うん、胸は慎まし…。

何故だ! 一言も口に出していないのに睨まれた…。

大きいのも良いけど慎ましいのも悪い事では無いよ、慎ましいのが良いという人も居るし…。


何故か口に出していないのにセーレさんに睨まれるので、そそくさとカウンターから離れ、併設された酒場でルイーズさんと話をしているカトレアの所に戻る。

うん、カトレアも慎ましいに分類されるのかな…、鎧で分からないけど、意外と大きかったりして…。


そんな事を思っていると、視線に気づいたカトレアが不思議そうな顔でこっちを見ている。

胸の大きさはルイーズさんが一番だな…、しかも隠すどころか堂々と谷間晒してるし…。


「カツヒコ、どこ見てるの?」

カトレアの冷めた声で現実に引き戻され、椅子に座る。


「あなたルイーズさんの胸をガン見して失礼だと思わないの?」

「いや、男としてはどうしても目が行ってしまうというか…、むしろ見るなと言うのが無理でしょ!」


そんな言葉にルイーズさんは笑いながら、「私に向かってそんな事を言う奴はそうそう居ない」と言って笑いながらジョッキに入った酒を飲み干す。


「はぁ~、男ってどうしてこうスケベなんだか…」

カトレアが呆れたようにため息をつき、ルイーズさんが笑いながら見たければ好きなだけ見ろと言わんばかりに胸鎧を持ち上げる。


うん、胸の谷間を見るとカトレアの冷たい視線が突き刺さるし、見ないとルイーズさんがつまらなさそうにするし、どうしろと!


「まあ、おふざけはこのくらいにして、ルイーズさんが面白い話を持ってきたわよ」

「面白い話? なに?」


怪訝そうな顔でカトレアを見ると、カトレアはルイーズさんに話をしてと言う感じで目配せをする。


「まあなんだ、簡単に言えば魔獣討伐だ。 場所は大森林の一番奥にある開拓村の近く…、いや元開拓村の近くだな、そして生き残りの話を聞く限り、獲物はウェアウルフを従えたバカでかい白い獣だ」

「白い獣? 情報はそれだけ?」


「ああ、100人ぐらい居た開拓民と護衛の冒険者はほぼ全滅、生き残ったのは子供を含め8人だ、そいつらの証言だとバカでかい白い獣とまでしか分からなかったみたいだな」

「うわ~、情報が曖昧、相手が分からなかったら対策とか立てられないし、下手に討伐に行くと返り討ちにあって餌になるだけじゃん!!」


そう言って関わりたくないオーラを出していると、カトレアは少し考えた後、口を開く。

「バカでかい白い獣って、レイムダリーアじゃないわよね? まあレイムダリーアは基本的に単独行動するからウェアウルフを率いているっていうから違うかもしれないけど…」

「レイムダリーア? なにそれ?」


不思議そうな顔をしているであろう自分と、何か思案をしているルイーズさん、そんな2人にカトレアが説明をしてくれる。

「レイムダリーアってのは、純白の毛をした巨大な猫ね、猫って言ってもその辺に居る猫と違って若い個体は狂暴で見かけた次の瞬間には襲い掛かって来てるなんて事もある魔獣、だけど魔力が高く成熟した上位個体は霊獣ともいわれ人の言葉を話す事もあるって話よ。 とは言え森の浅い所に出て来るなんてまずないはずだから違うと思うけど…」


「普段は大森林の奥に居るもんなの?」

「そうね、普通は大森林の奥、未踏の山脈辺りが生息域のはずよ、だけど白くバカでかい獣って言うとそれ以外は思いつかないわね、後は可能性としてウェアウルフの特殊な個体か…」


そう説明するカトレアにルイーズさんが真顔で質問をして来る。

「それで仮に魔獣がレイムダリーアだった場合、今の私でも倒せるか?」

「何とも言えないわね、どの程度の個体かが分からないと相手の力量も分からないし、レイムダリーアは大きくなくても馬鹿みたいに強い個体も居るって聞くし、まあウェアウルフの特殊個体なら問題ないと思うわよ、ただウェアウルフの数次第だけど…」


そんなカトレアの言葉を聞いてルイーズさんは少し考えこんだ後、口を開く。

「カトレア、カツヒコ、この依頼を私と一緒に受けてくれ、もちろん報酬は3等分で構わないし、白い獣は私がやるからウェアウルフの相手を頼みたい」

「私は構わないわ、カツヒコにもいい経験になるし」


うん、また自分の意思とは関係なしに話が決まった…。

嫌だとかそう言うのじゃ無いんだけど、自分にどうする? とか普通聞かない?

なぜにいい経験になるからの一言で決定するの?

カトレアからしたら、いざという時は私が殲滅するって思ってるんだろうけど、この疎外感…。


そう思っている間にカトレアとルイーズさんがどんどん話を進め、明後日の朝にはキャールを出発するとの事に決定した。

なんでも既に数組の冒険者が討伐に向かっているので先を越されないようにとの事、どうやら国からの依頼らしく早く魔獣を討伐し、安全が確認され次第、開拓村に人を移住させる為だとルイーズさんが言っていた。


開拓を進めるうえでこんな事態も良くある事みたいだけど、少し前に魔獣に襲われ全滅した村に移住したい人ってい居るの?

普通は身の危険を感じて行きたがらないと思うんだけど…。


そんな疑問にはルイーズさんが答えてくれた。

開拓村に移住を希望する人は王都や街のスラムに住む人が殆どで、その中でも働きたくても仕事がなく、開拓村に移住をすれば開拓した土地は自分の土地として代々引き継いで行けるらしい。 しかも既に一度は村になっていたので生活用品や農具、すでに開拓された土地などもあり入植者には均等に分配されるうえ、村で自給が出来るまでの間は国が食料などの支援をしてくれるとのこと。

働いて今の生活を抜け出したくても仕事が無く、スラムで明日の食事にも困っている人間には魅力的らしい。


う~ん、そんなもんなのかな~。

仕事なんて選好みしなければいくらでもありそうなのに…。

そんな疑問の答えをルイーズさんが教えてくれた。


「今はどうか知らないけど、雇う側がスラムの人間を基本的に雇いたがらないだよ。 それに雇ったとしても低賃金で重労働、しかも信用のある仕事は任されないから、仮に雇われても賃金が低いからスラムからは抜け出せない。 だから雇う側に信頼もされにくい」

「あぁ~~、そういう事ね、確かに雇う側としては信用のある人間を雇いたいだろうし、スラムに落ちたら早々抜け出せなくなるわけだ…」


「そういう事だな、かといって街や王都から外に出たら再度入る為の税が払えなくなるから気軽に外へは出れない。 そうなると町の中で燻るしか無くなる訳だ、そして街を出てしまって戻れなくなった人が行きつく先は、飢え死にか野盗になるか…」

「世知辛いね~~。 スラムの人は頑張っても報われにくい、だから危険でも開拓村への移住を希望するのか…」


「そういう事だ、だから国としても早々に問題の魔獣を討伐して安全を確保し開拓村に人を送りたいのさ。 スラムの住民が少しでも減れば治安向上にも繋がるしな」

「だったら冒険者に依頼出さないで国が軍隊派遣すれば早く解決するんじゃない?」


「確かにな、軍隊を派遣し数で押し切れば討伐も早く済むが、軍隊を動かすとなれば金がかかる。 だから冒険者へまずギルドに依頼を出す。 冒険者なら魔獣の返り討ちにあって死んでも弔慰金は必要ないからな」


う~ん、何となく予想通りな回答だった。

軍隊は武器や防具、食料も全て国が負担するし、兵士が怪我したり死んだりしたら補償も必要になるけど、冒険者は自分で武器や防具、食料を用意して何かあっても自己責任。

国としてはギルドに依頼を出してダメだったら軍隊を派遣するって言うのがこういう場合の流れなんだな…。


それにしてもルイーズさんの話だともう出発している冒険者も居るみたいだけど、現地に到着したら討伐されてましたなんて事は無いのかな。

無駄足にならなければいいんだけど、まあその際は薬草採取でもしながら帰って小金でも稼ぐか。

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