マン・ハンティング2 異世界でクラスメイトに復讐せよ

第1話 自由で平等な差別のない世界を作ろう。(笑)

 白亜の宮殿や屋敷が立ち並ぶ都市の中央。

 カラフルな色の屋根が立ち並ぶ街並みの中、ぽっかりと口を開けたように石畳が敷き詰められた広場があった。


 その広場を埋め尽くすほどの人、人、人。

 皆が皆、土や煙で薄汚れたコートやハット、くたびれたブラウスにショールやスカーフといった出で立ちで拳を振り上げている。


 あふれんばかりの貧しき人々の群れが中央に据えられた二本の柱に向かい、歓声を上げていた。


「殺せ!」


「王族を殺せ!」


「死ねー!」


 柱の間には木の寝台が据えられ、柱の中央の真下、寝台の端には仕切り板が挟まれている。仕切り板には、横から見ると人の頭が入りそうな丸い穴が開けられていた。

 その穴から整った顔立ちの男性の頭が押し出される。太陽に照らされた銀髪が頭上の刃よりも明るく輝く。


 上等そうなフロックコートを白いワイシャツの上から羽織ったその男性は、背中と腕をみすぼらしい格好をした屈強な男たちに押さえつけられていた。


 だが普通なら顔をしかめそうな状況でも、彼は表情を崩さない。


 暴力の痕跡のある顔をさらし、体の自由を奪われても王族の威厳を失ってはいなかった。


 彼こそがこのビスマルク王国、国王陛下。


 だが柱の間に備えられた巨大な刃は、威厳や身分に対して差別も区別も容赦もしない。


 人の胴体以上の重さがあるギロチンの刃を固定する綱に対し、斧が振り下ろされた。


 人を処刑するためだけに作られ、磨かれ、存在する刃が徐々に速度を増して国王陛下のうなじに迫っていく。


 ぐしゃり。


 そう形容するしかない、肉と骨とをまとめて両断する音。それと共に国王陛下の首は勢いよく飛んでいく。


 同時に切断されたうなじの銀髪も、羽毛のように宙に舞い朝露のように煌めいた。

スーツを纏った男が無遠慮な手つきでその首を拾い上げ、高々と掲げる。


「大統領万歳!」


「共和国万歳!」


 やがて国王の妻の首も、同じ運命を辿る。


「やめて、やめてぇっ」


 最後におかっぱの銀髪にくりくりとしたつぶらな瞳、透けるように白い肌をした少女がギロチンの下に引きずり出された。


 十を少し過ぎたくらいの少女が悲鳴を上げているというのに、同情するそぶりを誰一人として見せなかった。


 スーツの男も、押さえつけている屈強な男も、歓声を上げる貧しい民も。

 両親の首を見て泣きじゃくる少女に対し、かえって嗜虐心を煽られていた。

 少女の纏ったドレスはあちこちが引き裂かれ、二の腕や太腿の素肌を晒していた。


「騒ぐんじゃねえ。『リヒト』も使えねえ王族の屑が」


 屈強な男の一人がそうあざ笑うかのように言うと、歓声の中に笑い声が混じった。

 首をはねるために仕切り板の穴から少女の頭が出され、胴体と腕を抑え込まれる。両親と違いじたばたともがく少女を、スーツを纏った男が殴りつけた。


 やがて抵抗をやめた少女の首筋に刃が舞い、両親と同じ有様となる。

 三つの首を空高く掲げたスーツ姿の男は、歓声の中でも良く通る声で叫んだ。


「これで国民を苦しめる王族は滅びました! 今この時より私は、自由で平等な差別のない世界を国民とともに作り上げることを誓う!」


 三つの首を片手で持ち上げながらもう片方の手を大きく振り上げ、拳を握りしめる。

 その芝居がかった仕草と共に歓声は最高潮に達した。


「万歳!」

「万歳!」

「万歳!」

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