第25話 姫の逃走劇



 勇者様から逃げなければならない。

 私は、できるだけ遠くへ向かおうと考えました。


 けれど、私は聖女。


 荒れた土地を走ったことなどありませんでした。


 良く知らない土地を蹴る足は、すぐに悲鳴をあげてしまいます。


 必死の思いで逃げ続けていたけれど、すぐに力尽きてしまいました。


 一秒だって無駄にできない。

 そう分かっているけれど、体がついていきません。


 私は、大きな木の根元を見つけて、なすすべもなく倒れ込んでしまいます。


 休もう、と思ったとたん気が緩んだのでしょう。


 気が遠くなっていきます。


 意識を失う寸前、誰かが近づいてくるのが、気配で分かりました。


 それが豹変した勇者様でない事を願いながら、意識が暗闇に包まれました。


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