第22話 万全の備えすぎる



 結論が出た。

 私一人では、勇者様から逃げられない。

 どう考えたって逃げられるビジョンが浮かばなかった。


「では、クリスティーゼ姫、おやすみなさい」

「お、おやすみなさいませ」


 寝室まで送り届けてもらった私は、にこやかに笑む勇者様に頭を下げる。

 寝室の中まで一緒に、というわけではないのがわずかに救いだった。


 勇者様はどこか別の場所で寝起きしているらしい。


 危ないものだらけの建物の中だけれど、寝室だけは心から唯一リラックスできた。


 私はふと考えてから、閉まったばかりのドアに手をかけて、外側に開けようとしました。


 力を込めて、ドアを動かそうとしますが開きませんでした。

 ピクリともしません。

 ドアノブすら周りません。


 完全に閉じ込められています。


 万全の準備で自由を制限されてしまっている私は、自分の意思で出歩く事ができないみたいです。


 魔王の城に幽閉されていた時も自由はなかったけれど、まだあちらは私の事を甘く見ていたので隙がありました。


 しょせんは小娘。

 か弱い人間。


 そういう意識があったから、部屋の外をうろうろできるチャンスもそれなりにあったのですが、ここではまったく無理なようです。


「ネロ、教えて。これから私はどうすれば良いの?」


 小娘一人にも容赦のしない勇者アルト様。

 勇者様の皮を被った悪魔だったのですか?


 私は彼に捕らわれている生活に鳥肌を立てながら、布団にもぐりこむしかできませんでした。


 いつか脱出できる時がくるんでしょうか。


 けれど、私は気づきませんでした。その時がもうすでにすぐ近くに来ているという事に。


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