白黒の夢

夢喰い。

そんなもの,ファンタジーにしか存在していないと思っていた。

「とりあえず...自己紹介でもしようかな。俺はルプル。バクっていう種族なんだ。」

作り物の笑顔で,彼は言葉を発する。

「ご丁寧にありがと。俺はエルト。そっちで寝ているのはブラン。」

「知っているよ。君達はお互いの夢によく出てきていたからね。」

俺の夢まで喰らっているのか...

感謝するべきかどうかわからない。

「二人とも,似たような夢を見るから面白かったよ。鮮やかさなんてない。白黒の夢。悲劇と絶望の混じったそんな夢さ。」

髪の隙間から見えた,耳に光るピアスがどこか,寂しげに見えた。

彼は,俺が目覚めるまで,苦しい夢を喰らい続けていたんだ。

「ふぅ......今後は,起きていようがいまいが,勝手に喰らわせてもらうからそこのところよろしくね。」

「待ってください!急に言われても...そんなのダメですよ...」

慌てた様子でクレールがルプルを止める。

まぁ...助けてもらった恩だし,もしかしたらいいやつなのかも...

「いいよ。喰らって。」

満面の笑みで二人に笑いかける。

二人とも驚いた様子で一度,お互いの顔を見合いまた,こちらを見る。

「ふふっ,じゃあよろしくね。」

白黒の夢も,鮮やか夢も,

これから餌になる。

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