第5話 爆ぜる魔術士(4)魔術士への異常な関心

 優秀、熱心、研究第一、偏執的なまでに魔術士に執着する。深見の大学時代の指導教官やゼミ仲間に訊き込んだ結果、それが深見嘉之への周囲の人物像だった。

「頭の良さは誰もが認めるが、熱心すぎる、というのが共通した見方だな」

「研究の為に、死刑判決の出た魔術士を欲しがったなんてのはぞっとする話だぜ。何をしようとしてたのやら」

 ヒロムは肩をすぼめて震えてみせた。

「関与は疑わしいけど、証拠がなあ」

 あまねが困ったように頭を掻く。

「遺体から何か出ましたか」

 訊くと、笙野は首を振った。

「まだ検査中よ。何しろ爆発してるから、大変らしいわ」

 想像して、あまねもヒロムも、ちょっと科警研の職員に同情した。

「浅井は、外面はいいエリートだったみたいですね。負けず嫌いでプライドの塊だった面もあったようで、ライバルに負けると実は機嫌が悪くなるというのは、部下には知られていたみたいです」

「DV被害に遭っていた彼女も、会社で誰それの方が評価された、とか言いながら殴られたりしたそうです。何で俺が優秀なのにそれがわからない、俺の言う事を聞いとけばいいってわからないんだ、って」

 浅井を調べて来たブチさんとマチが言う。

「浅井の妹が成績ではぱっとしないそうですが、魔術士だと小学校卒業時の検査でわかって、それまで浅井を褒めて甘やかしていた親は、妹に関心を移したそうです。それ以来浅井は、魔術士を目の敵にしていたそうです」

 ブチさんが言うと、皆、「ああ」と声を漏らした。

 管理者であり、唯一の一般人である笙野は、小さく息を吐いた。

「薄っぺらいやつね。みっともない。

 心情的には黒って言いたいけど、証拠が何も無いわね」

「そう言えば、深見の野郎、あまねを見る目付きがやばかったぜ」

 それに、言ったヒロム以外がギョッとした。

「え、そうだった?まあ、気持ち悪いとは思ったけど」

 首を傾げるあまねに、身を乗り出すのは笙野とマチだ。

「だだ大丈夫ですか!?まさか狙われているんじゃ!?」

「狙われてるって、いやん、だめよ、あまねにはヒロムがいるんだから。でもどうしましょう。あまねのピンチに駆けつけるヒロムとか、そのあと――いやあん」

 崩壊していく笙野に、全員が引いている。

「か、係長?」

「はっ!?

 な、何でもないわ。

 実験に使おうとでも思っているのかしら?」

「うおっ。もしかしてチャンスじゃねえ?」

「あまね、気を付けろよ。というか、マチも、1人で行動するのは危険だな」

「心配してくれるのはブチさんだけか……」

 あまねは肩を落とした。

 その時、内線電話が鳴り出し、出た笙野が即命令を下した。

「ロビーで男が人質を取って要求しているそうよ。魔術士を出せって」

「ロビー?どこのですかぁ?」

 首を傾げるマチに、笙野が言った。

「ここ。警視庁よ」

「ええ!?」

 それであまねたちは、部屋を飛び出して行った。





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