プロローグ:願い
人が死ぬ時、走馬灯が走るってほんとの事なんだな……あぁ、自分の幼い頃から今までの印象的な記憶が今フラッシュバックされていく。
あれ? そういや俺どうして死にかけてたんだっけ?
んー……そうだ!ここ数日あのクソ上司がした仕事のミスを俺が一人で尻拭いすることになったせいで3日3晩、休みなしで作業し続けた結果、寝てないから無理が祟ったのか……。
あぁ、なんで今思い出すんだ……子供の頃の夢……絵本に出てきた正義の魔法使いになる……だっけか?
その結果、学校へ行って何もないところで「くるっ」とか呟いたり、自分には秘められし力があるとか馬鹿みたいな事を呟いていた。
しかしイジメはなかった、逆に面白いやつだと言われ友達はいっぱいいた。
高校卒業まで、修行を続ければ魔法は手に入れられると滝に打たれたり、瞑想をしたり、山に篭ったりした時は1ヶ月後にやっと家に帰った時は、お袋に心配かけちまったこともあったか。
友達にも、とても心配されて怒られたりした。
しかし、いつまでもそんな子供みたいな夢を見る事を世間は認めない。
仲良かった友達は、新しい友達が出来てから自分と接する事を避け始めた。友達も減っていった、近所にも「あそこのお子さんはちょっとヤバイらしいわよ、ヤダヤダ」なんて陰口叩かれたっけ?
そしてお袋に泣きながら、魔法は存在しない、お願いだから普通の人みたいに生きていってと泣かれた結果、俺はやっと現実を見ようとしたんだっけか?
その結果、こんなつまらない人生で、つまらない死に方をするのか……俺…カッコ悪りぃ……。
お袋のせいではない、決して違う。
ただ……産まれた世界を間違えただけなんだ。
だ……れも、わるくな……い……
どうにも……こ……のせか……は、おれ……せますぎた……だ……。
***
「あっ、お母さん赤ちゃんが目を覚ましたよ〜?」
何か、声が聞こえる。俺は…どうしたんだ?死んだんじゃなかったのか…?
重たい瞼を開けると、視界はかなりぼやけていた。しかしそこには小さな女の子が自分の顔を覗き込んでいるのが分かる。
「ふふ、メアリーったらユーリーのことが気になってたまらないのね?」
「だってなんかお肌がぷにぷにしてて、可愛いんだもん!ずっと見ていたい」
小さな女の子の近くに大きな女性が来たことが見えた。しかし二人ともどんな顔をしているのか分からない。
しかしこの状況は、もしかして?
「あうっ」
変な声を出したが頑張って自分の両手を上にあげた。
そこにはとても短い、ちぎりパンの様な腕がある。
赤ん坊の腕だ、そうか……そうか俺は転生したのか?!しかしここはどこだ? 名前的に日本ではない様だが、外国か?
ダメだ、何を考えたところで分からない。
「あう?」
自分でなにかを考え込んでいると、思わず声を出しながら首を傾げてしまった。その様子を見た女性と女の子に声をかけられた。
「ママ〜、ユーリーったら私たちのこと誰か知らないみたいだよー。お姉ちゃんとママの事を忘れるなんて悪い子だ!えいっ」
小さな女の子はそう言って俺のほっぺをつねってきた。
いやちょっと待ってほしい、君力加減って知ってる?割と痛いんだが、俺が精神大人出てなきゃ大声出して泣いちゃうぞコラ!
「ふふふ、ダメよマリー(Mary)、ユーリーを虐めちゃダメよ。あなたの弟なんだから、もしかしたらこれでお姉ちゃんの事嫌いになっちゃうかもよ?」
「え? それはやだ!ごめんねユーリー(Jurij)、よしよし……」
姉? なる女の子につねられた頬を撫でられ、それが気持ちよくてついつい意識を手放してしまった。
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