暇な魔術士やってたのに、最近になって少し忙しくなってきました。
@papikon
第1話 幕開ケル前
薄暗い照明が照らすコーヒーとトースト……
朝の早い時間なのでこの店に俺以外の客は居ない。
「カーラ……コーヒー頼んで無いんだけど。」
「………はぁ。成人している男がブラックのコーヒーも飲めない何て恥ずかしくないの?。それはオマケ、飲んでってよ。」
この店を1人で切り盛りする女性……カーラはそれだけ言うと昼の客入りが増える時間に向けて用意を始めた。
「……違う、そうじゃない。」
コーヒーの香りは好きだ……だが俺は飲めない。
これはあまりに苦すぎる、もっと甘い飲み物が有るのだから……俺はそっちの方が好きだ。
そう、そっちの方が好きなのだから当然トーストと共に頼むのも『そっち』だ。
「なんでミルクティーを頼んだのにコーヒーを出すのさ。これはオマケじゃなくて嫌がらせだぞ………。」
「………もぉ。……少しは大人の渋さってのを身に付ける努力をしなさいよ。」
カーラはそう言うと怠そうに紅茶を淹れ始めた。
大人の渋さと言われてもそんなの俺にはどうでもいい。
そもそもコーヒーのブラックを飲んで『ああ……美味い』って言うののどこがカッコイイのかさっぱり分からない。
甘ったるいミルクティーを飲むのが………好きな物を選ぶ事の何が恥ずかしいのか。
「ミルクと砂糖は多めね。」
「うっさい、毎日1回は言われてるっつーの。」
確かにほぼ毎日言っているが……前に言わなかった日のミルクティーには殆ど入れてくれなかったから毎日言ってるだけなのだ。
……だが、そうは言っても結局ミルクティーを出す事になるのは分かっていたようで、カーラは直ぐに持って来てくれた。
そのまま俺はミルクティーを、カーラは俺に出したコーヒーを1口含み………余り大きく無い窓から外の路地を眺める。
「……ディノは今日も暇なの?。」
ポツリと……呟くようにカーラが喋る。
独り言のように……路地をぼんやりと眺めながら俺に伝えようとゆう意思が感じ取れないか細い一言だ。
だが…声を張らなければ聞こえない距離でもないし、一々顔を付き合わせて喜ぶような仲でも無い。俺達に取っては何気ないただのやり取りだ。
「……さぁ、どうだろうな。それはまだ分からない…、」
カーラの問に答えようとしている時、少し前に路地を通ったはずの男性が小走りで戻っていった。
そして、同じ方向に走っていく人が何人も……。
俺はトーストを半分に割り、二口に分けて口に詰め込み……ミルクティーで胃に流し込む。
「前言撤回……小銭位は稼げそうだ。」
「そう、………良かったね。」
短いやり取りを終えるとかけていた椅子から立ち上がり、コートを羽織ると足元に立て掛けておいたクロスボウの肩紐を掴み、出口に向かう。
「あっ、すぐ戻っても良いようにそれ置いといてね。」
そう言って食べかけの朝食を指さしドアを開ける。
「わかった、近くの鳩に振る舞うね。」
「全然分かってねえな、難聴かよ。」
今日はそんな……いつも通りの会話をし、いつもより早く店を出た。
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