控えめに言って、天才の方が書いた連作集です。
幽霊を見ることができる兄と神様でも怪異でもブン殴って退治することができる弟のお話。
どのお話から読んでも楽しめます。怖いものから少し不思議なものまで、お話の幅は多岐に渡っています。
私が好きなのは『ヴェンステルのこと』です。不思議な能力をもつ猫さんと宍戸さんの出会いが描かれています。猫のヴェンちゃんにはぜひ、再登場願いたいです。
主な登場人物である兄弟以外のキャラクターも個性豊かで、探偵の間宮さんも飄々としていて、魅力的なキャラクターです。
あと、さらっと同性同士のカップルが出てくるところも好きですね。
怖いお話は起こることが非日常であるためか、登場人物たちは世間でマジョリティであるとされる異性愛規範に即していることが多く、男女のカップルを基本とした家族関係が描かれています。世の中には同性同士のカップルや相手がいない人もいるのになあと少し残念に思いながら読むことが多かったので、市岡奇譚にさらっと同性同士のカップルが出てきた時は拍手喝采で本当にうれしかったです。
市岡兄弟や他のキャラクターがどうなるかこれからも楽しみにしています。