第7話 上四方固め、それ以外なにものでもない

 あたしの花園への来客数は日に日に増えていった。もちろん全員入園お断りだ。


 そろそろ国家権力、じゃなかった、学校権力先生に言いつけるぞの出番ともいえるが、それやったら何か負けた気がして面白くない。


 登校時間は大抵ギリギリだから、ホームルームまでの時間と、各授業の狭間の休憩時間は何とかなる。

 昼休みのまとまった時間は、究のところに避難して、学校が終わったらダッシュして帰る。


 よし、これでブームが終わるまで逃げ切ろう。


 実際、パンチラファイトは下火になってきたようで、だんだん見かけなくなってきた。あのティーバック爆弾が効いたのだろうか。


「割合が変わってきた気がします……」


 タカコ、あたし、ビトーちゃんの3人とトイレ個室休憩室にてプチ女子会をしていたら、ビトーちゃんがぽつりと言った。


「どういう意味」


「クラスの男子が、女子のチラ見せを見ている人より、あげはちゃんのスカートめくりに興味がある方が増えている気がするんです……」


「そうなの? タカコ」


「うーん、分かんないなぁ。女子のチラ見せはちょっと変わって、今までは勝負!!って感じだったけど、最近は挨拶みたいな感じになった気はする」


 どこの世界の風習だ。挨拶で帽子をとって頭を下げるのは知ってるが、あらおはよう、なんて言いながらパンツ見せる風習なんかあるかっ。


「実際の話、そんなにたくさんの種類、持ってないもんね。ネタ切れになってきたんじゃない」


 少なくともタカコは、そうなんだろうな。まあ、あたしもそうだ。未成年無収入のジョシコーセーの立場では、親に買ってもらうしかない。


 おしゃれなものは高いし、色気づいたら親は心配して色々と煩いだろうからな。


「だから、女の子がおとなしくなった分、男子が活発になって、あげはちゃんのところに来ている気がするの……」


 ビトーちゃんの席は、最後尾のほぼ真ん中だから、教室全体が見れるのだろう。

 ちなみにカトーちゃん、あたし、タカコは窓際の少し後ろの方にある。


おいおいおいおいおいわけとうげ


 つまり女子はチラ見せして、男子はスカートめくりしているのか。なんてクラスだ、うちだけなのか、他のクラスもそうなのか、もしそうなら変態高校だぞ、ネットでバズるぞ。


「ムトーちゃんによると、他でもやっているらしいよ。少なくともムトーちゃんのクラスでは、そうなっているって」


 隣のクラスでも、そうなっているのか。頭がいたい、ブームの終わりを願っているのに、さらに拡がろうとしているかもしれないのか。


 とりあえず今日の昼休みも、究のところに避難しよう。


 あたし達は、チャイムが鳴ると同時に教室に向かった。

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