僕は野良猫に拾われ、そして恋をする

ロッキーズ

第1話 強制任務の失敗

「カ・・カース!?」

「ハハハ、バカなやつだ。お前は俺に太刀打ちなどできない。いくらランクを上げようとなぁ」


 Aランクになった僕は、初めてソロ任務に就いた矢先の事だった。僕たちの住む都市の敵対派閥ブラードとの交戦中、配慮ミスにより僕は敵のカースにかかってしまう。四肢に力が入らずその場で膝をつく僕に、近くで潜んでいた奴らの仲間が一斉に攻撃を仕掛けてきた。


「ゲフッ、ウァ・・」


 誰も助けに来れない森の中、僕は殺されずただ痛めつけられていた。

 顔は切り傷だらけ、肋骨が折れる音、腹部を殴られ蹴られで大量の吐血。ああ、走馬灯が見える・・・



 父さん、父さん!僕ランクが上がったよ、これでもうすぐ一人前になれる。父さんみたいに格好いい上級冒険者になってみんなを守る!


「満足か?お前は上級冒険者には向かない。第一、器ではない。お前はただの臆病者だ。」

 

 僕は妹を亡くしている、オークに叩き潰された。当時僕は、潰される妹を見ながら、ただ立ち尽くすことしかできなかった。父に失望され、自分で自分に失望した。



「僕は・・僕は・・・もう臆病者なんかじゃない!」


 四肢に魔力を込め、カースに打ち勝とうと立ち上がる。

 だがしかし・・


「バゴンッ」


「こいつ本当にAランクなのか?まあいい、殺すだけ魔力の無駄遣いだ。行くぞ。」


 後頭部からの一撃で僕は目の前が真っ暗になり気を失った。


 木々の隙間からこぼれ落ちる光に照らされながら夢の中に沈む。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん。抱っこしてー。」

 まだ小さい僕たちの何気ない日常の風景を遠くから見つめる。白いモヤがだんだんと灰色のモヤになり暖かい日常が消え、父と母が泣き崩れる姿が現れる。


 僕の周囲の人間は皆冷たくなった。僕に関心などなく、いてもいなくてもどうでもいい存在。


 ごめんね、ごめんね、守れなくてごめんね。

 

 変えたい、変わりたい、あいつらを見返してやりたい。



 突然息が苦しくなり、目が覚める。真っ先に目に入ったのはボロボロで穴の開いた天井。意識がだんだんとはっきりしていき、やがて一匹の猫が部屋の隅に座っている事に気付いた。

 

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