第26話 騎士科編:学院2年生夏⑨帝国騎士団青騎士隊
無事に帝都に到着したアリスンたちは、警邏の駐屯地に収容された。
警邏というのは、街の安全を守る騎士隊の通称だ。
正式名称は帝国騎士団青騎士隊だ。
その名の通り、騎士服が青い。
ジェフリーは緑隊に所属しているが魔獣討伐部隊と呼ばれている。
ハスウェルの憧れてる黒隊は、戦争屋と呼ばれる血気盛んな部隊になる。
馬鹿な騎士が所属していた部隊は白隊で、見目麗しい奴らが所属する。皇族警護や皇城警備にあたるので近衛隊とも呼ばれている。
その他にも、辺境の砦勤務の赤隊、情報収集など特殊部隊である無色隊がある。
白、黒、緑、赤、青、無色の騎士隊を合わせて帝国騎士団となる。
そして各々の騎士隊の中には、小隊・中隊・大隊とさらに細かく分かれており、それらを纏めるトップは○隊首長とよばれる。
今、アリスンがいるところは青隊首長の執務室である。
大人がいる中に、11歳の女児が一緒に並んで座るというシュールな空間が出来上がっている。
(いたたまれない.....。私を解放して〜!!)
「さて、今回のきつね狩りに貢献した面々に集まってもらった.....。
まずは、この事態を把握してなかった不甲斐ない事態を謝罪する。すまなかった...。」と、青隊首長が頭を下げた。
(ヒィ、うちのとう様よりも年上に頭下げられてるぅ!恐ろしい!)
アリスンは、ここから逃げ出したくなった。
「そうですね、隊内部の情報系統が壊滅的ですね。早急に改善をして欲しいものです。
今回の事件に関わっていた騎士隊員の多さに呆れています。嘆かわしい。
まあ、青隊だけではありませんでしたが。
今のところ、白、青、緑に小蝿が数匹いたことがわかってます。
狐?そんな可愛いものじゃないですよ。ゴミにたかる蝿がいいところでしょうね。」と、ファラウトが普段の柔和な雰囲気をかなぐり捨てて一蹴する。
(こわっ!怖いよ、母さま〜!閻魔様がいるよ〜!)
アリスンは、更にここから逃げ出したくなった。
「ほんとにね。いい大人の男どもが、抵抗出来ない小さな子たちを利用するなんて外道だね。
騎士?はっ、最近の騎士道って腐ってるんじゃないかい。
うちの高利貸し業の強面連中の方が誇りが高いね。うちの店が騎士隊って名乗ってもいいんじゃないかい?
こんなところで謝罪をするくらいなら、とっとと指示をあらゆるところに出しな。
騎士団の上のもんと行政府の上と連携して、早く結果を出すんだねぇ。
奴隷商の豚を、拷問にでもかけて早く喋らせな。
なんならうちの国の拷問具を貸そうかい?ふふふ。」と、胡蝶も絶対零度の微笑を浮かべて青隊首長を貶す。
(おぉぅ、姐さんも怖い...。美人が怒るとめちゃくちゃ怖い!助けて、母さま〜!!)
アリスンは、ここからもっと更に逃げ出したくなった。
首長の顔色がどんどん悪くなっていく。
そんな首長と目が合った。
(!?)
え、なに?11歳児に何か?
私も二人みたいに貶したらいいの?
「.....。君が囮になって証拠を掴んだそうだね。ありがとう....。」と、首長が御礼を述べてくれた。
「「.............。」」
引き続き首長とアリスンは、目を合わせ続ける....。
なに?なにを言えばいいの?
(助けて〜、11歳には無理ー。母さま〜!!)
アリスンは、ここから一目散に逃げ出したくなった。
(そうだ、こんな時は、脳内会議です!)
Hey ヘルプミー!!
誰か〜!!
「はーい、アリスンさん。どーも、ダヴィンチですー。僕が出てきました。」
「賢者さーん、ありがとう!
なにを喋ればいいのかな⁈首長がめっちゃみてくるんだけど!」
「うーん、多分ですが。
ジェフリーさんがまだ現場から帰ってきてないので、現場の状況を聞きたいんじゃないですか?
でも、11歳に報告させるのも気が引けるっていう男のプライド?があるんじゃないですかね。
ちなみに、執事のメルギフさんは『無能か?筋肉ダルマ。お前の股間も脳味噌も人望もスッカラカンだ。』と罵ってやれって言ってました。
それを聞いて、魔女のグレーテルさんはお腹を抱えて笑って『もげろっ!』って言ってました。」
(うん、メルギフとグレーテルは出てこなくていいよ。全然、役に立たない。)
アリスンは、不安でいっぱいだったが報告をすることにした。
「えー、こんにちは。アリスン・ベラルフォンです。ここに呼ばれたのは、現場の状況報告が必要ということでしょうか....?」
話しかけると首長が、パァっと嬉しそうにした。
が、それも一瞬で引っ込む。
姐さんとファラウトが、睨んだからだ。
「(正解っぽいから報告しよう。)奴隷商人の隠れ家の地下の牢屋に入れられました。他に女の子が3人いました。
しばらくすると、黒猫の人達が奴隷商人の捕縛と私たちの救出に当たってくれて騒ぎになりました。
思ったより、相手の数が多くててこずったそうです。
その間、人質にされそうになったので応戦し3人ほど意識を刈り取ったところ、ジェフリーさんが助けに来てくれました。
隠れ家にも外にも、生きてるけど瀕死の状態の人達がたくさんいて、ほとんど緑隊のジェフリーさんがやっつけてくれました。以上です。(11歳児の説明としてはこんなもんよね?)」
3人の大人の表情が驚愕に染まった。
(えっ、なに?なにかやらかした?)
「アリスン、3人もの刃物を持った大人をやっつけたのかい?」と、胡蝶姐さんが引き攣ったような何とも言えない顔で聞いてきた。
「はい。人質にされたら、状況が悪くなります。私が、囮に選ばれたのは戦闘能力を見越してですよね?」
至極真っ当な顔でアリスンは答えた。
「違うよぉ〜!たまたま、僕の知り合いで町娘に擬態ができそうだったのが、アリスンだったんだよ。危険なことに巻き込むつもりは全くなかったんだよぉ。」
ファラウトが、素になってしまった。
「えぇぇぇぇっ!!
だって、ジェフリーは知ってたよ!私が強いってこと!」
「えっ、ジェフリーが?僕も知らないことをなんであいつが知ってるの?」
「「...........??」」
二人で首を右と左に傾けて、クエッションマークを飛ばす。
「...ベラルフォン嬢は、騎士科に所属してるのだろうか?」と、首長が口を挟んできた。
「はい。」
「では、それだけの実力なら選抜クラスに入っているのかな?」
「はい、2年の首席です。」と、さらっと答えたら首長もファラウトも驚愕した。
「凄いねぇ!僕、学院卒業しちゃったから今の2年生と1年生の情報が全く入ってこないから驚いたよぉ!」
ファラウトでも学院の中までは探れないんだ?
そっかぁ、学院の中の様子って閉鎖的で探れないのか。
ん?じゃあなんでジェフリーは知ってたんだ?
「君が首席とは...。今年の芸術祭を楽しみにしてるよ。では、チータゲルクが帰ってきたら詳細を聞くことにする。
また、聴取が必要になったらきてもらうが、今日のところは帰ってくれて大丈夫だ。」と、首長からようやく解放された。
ていうか、チータゲルクって!?
ジェフリーって、ハスウェルの兄ちゃんだったのぉぉ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます