第10話 学院編:学院1年生冬-変態と女王さまと犬
秋が過ぎ、街の景色も緑や赤黄色の葉っぱもなくなりすっかり色も無くし、寒々しくなった。
もうすぐ本格的な冬がくる。
今日は、ロングホームルームにて重要な連絡事項をマダム・バレンティンから拝聴させて戴いていた。
「皆さん、芸術祭も終わりましたね。来年のいい目標になったことでしょう。
さて、これからは冬の一大イベント、1年生の演習について説明します。
上級生からも聞いている人もいるでしょう。この学院の一番過酷な地獄の演習です。
真冬の雪が降り積もる極寒の時にあえて野営をします。これを乗り越えたら、どんな状況でも野営をして生きていけるでしょう。
これが、後々あなたたちの糧になるのです。
魔物が出ることを心配している人もいるでしょう。でも、安心しなさい。
2年生以上の騎士科の先輩が護衛してくれます。魔物が出ても、第5級危険種しか出ない地域です。ナイフでひと突きすればなんとかなります。
そこ、ざわざわしないっ。」
パシっ!
マダムのケインが振り落とされた。
ゾゾ、ゾゾゾゾワっってきました!
ヤバイです!
女王さまが降臨されました!!
アリスン、大興奮です。
今日のマダムのケインは、竹の色が冬仕様で白と水色のコントラスト、グリップ部分が黒のレザーを使っていて、お洒落かつミステリアス。
さ、最高です!!
「最悪体調不良になっても、野営地に1棟だけ暖炉付きの家があります。そこで救護を受けれます。脱落者もそこに収容されます。
それでも単位は、きちんとあげましょう。
で・す・が、今後耐えきれなかったという軟弱者のレッテルを張られ、卒業後の思い出話に花が咲くこともなく大変居心地が悪くなる筋書きが定まってしまいます。
私は、このクラスの皆さんは軟弱者ではないと思っております。耐えなさい!」
パシっ!
(イエス、マム!!全力で演習に励みます!ご褒美ください!)
「装備や、テントなどの詳細はその紙に書いてあります。自分で用意をしてもよし、学生課でレンタル申請をしてもよし。1ヶ月後までにそろえておくように。
班員は、4〜6人のグループで組むように。凍傷にならないために2人ひと組で抱き合って仮眠をすることになりますので男女の比率はよく考えて組むように。
できた班から私に報告!以上解散!」とマダムはスタスタと教室を出て行った。
はぁ〜、今日も私のパッションは振り切っております!神に感謝を〜!!
「なあ、今度の休息日に道具を買いに行かないか?」
ハスウェルが、頬杖をつきながら提案してきた。
「うーん、私はレンタルにしようかな。どうせ来年以降は文官科だから、演習これっきりだしね。1回だけのために買うのは無駄じゃない?」
「そうだね、僕もレンタルにするよ。今回の演習が終わったら、もう大人になるまで使わないだろうし。
まあ、大人になっても雪の時は長距離移動はしないし、一生使わない可能性の方が高いしね。」
コンラッドも、私に同意してくれた。
「私は自分で用意するわ。誰が使ったかわからないモノは嫌だもの。
きっと、家のものが適当にそろえてくれるわ。
あ、でもアリスン。毛布と敷布は、自分で用意して欲しいわ。くっついて仮眠するのに、汚い毛布じゃ嫌よ。」
エリザは、上級貴族らしく全て新調するらしい。
「わかった。毛布類は借りずに用意する。
コンラッド、学生課にレンタル申請してくるついでにマダムに班員も報告してこようか。行こう。」と、教室を出て行こうとしたらつんのめった。
見ると足にハスウェルがくっついてた。なぜに?
「ハスウェル!何?仮にも婦女子である私の足にひっつくなんて、騎士道に反する行いよ!?」
「アリスン、まだ文官科に行くつもりなのか?騎士科に変更しようぜ。進路決定もうすぐじゃん。騎士科にするって言わないと、俺は離れないっ!」
「天変地異が起こったって、文官科に行く。離しなさい!!ハスウェル、伏せっ!お座り!回って待て!」
ハスウェルは条件反射で伏せからお座り、回ってワンまでした。
馬鹿だ... 今のうちに、目的を果たそう。
「じゃ、行くね〜。」
あぁぁぁぁっと、断末魔が教室から聞こえてきた。
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