第2話 学院編:学院1年生秋-嵐の前の静けさ-

この世界は、大きな3つの大陸に分かれている。

そして、その中の一番大きい大陸の約半分を占める国がある。

帝国グーテンバルクだ。そこに私は生きている。

貴族だから領地もある。

領地は家名と一緒でベラルフォン領だ。宿屋も食事処も雑貨屋も一通りそろってる。

鉱山を持ってるので鍛治や宝石加工などが有名で活気があってきらびやかだ。

私は、この街が気に入っている。暮らしやすいので、誇りに思っている。


幼少期は、この街で前世の記憶をたくさん持ってることを誰にも伝えず、出来すぎない子供を必死で演じていた。

まぁ、暇だからこっそり抜け出して書物を読んだり、鍛錬をしたりして、いざという時自衛できるようにしていたけどね。

なんてったって、幸せに老衰が目標だからね!途中で死なんっ。

あとは、貴族だから家庭教師がついて基礎の勉強とマナーを10歳まで学んでいた。

なぜ10歳までかというと、帝国では富裕層の民は10歳の春から帝国学院に通い出す。

16歳まで帝国学院で過ごし、卒業後就職する。

女性の場合は、婚約者がいれば結婚する人もいる。エリザみたいにね!!

ベラルフォン領から帝国学院までは、馬車だと2日、早駆けで1日かかる。

結果、現在学生寮暮らしだ。

同伴のメイドもしくは従僕を1人だけつれて行けるので、もちろんメアリーを伴った。

メアリーは優秀だ!掃除洗濯に給仕、着替えのコーディネートの知識、化粧の技術なんでもこいのパーフェクトメイドだ。

私も前世の知識で一通りできるが、完璧具合が違う!!

一般のおかんレベルと高級ホテルの執事くらい違う。特に紅茶を淹れさせたら右に出るものはいない。神が降臨するんじゃないかと思う。(実際神が現れたら迷わず呪いを解いてもらうがねっ!!)

口調は丁寧だが、ズバズバ意見を言うので姉御みたいで安心する。

一生結婚せずにいてほしいけど、無理かな?


「お嬢様、起きてくださいませ。今日から後期のカリキュラムが始まりますよ。気を引き締めて、淑女の仮面をつけてくださいませ。」

ゆるゆると目を開けてみると、すっきりとした秋空が窓の外に見えた。

「おはよう、メアリー。

木々が紅葉していて、美しい朝だね。メープルシロップが食べたいよ。」

「何を言ってるんですか、紅葉を見て何故メープルシロップ!?

あたま大丈夫ですか?まだ寝てますか?」

「メアリー....起きてるよ。頭も正常だ。

もみじの葉っぱがね、ある国の国旗に似ててね。(この世界じゃないけどね、カナダっていう国なんだよ)そこの名産がメープルシロップなんだ。」

「はぁ、そんな国ありましたっけ?まだまだ、私も勉強が足りないようです。精進します。でも、今日の朝食はちょうどパンケーキですよ。」

うん、今日も私は幸せだ!


ご飯も食べ終わり、準備も終えた。

「それでは、お嬢様いってらっしゃいませ。」

今日の私の格好は、燃えるような赤い髪をサイドを編み込んで1つにまとめたポニーテール。白いブラウスにリボンタイ。胸の下からAラインの群青色のロングスカート。靴は、編み上げのショートブーツ。ここまでが女子の制服だ。

最後に学年別のマントをつけて完成。(1年は、アクアマリン色のマントになる)

タイとマントの留め金は自由でいいので、ちょっと個性が出せるお気に入りポイント。もちろん我が領名産の宝石を使った留め金だ。

今日の気分は、アンバーだ。

イチョウの色で秋らしい気分にさせてくれる、幸運を引き寄せる願掛けも新学期にふさわしい。

アリスン・ベラルフォン10歳、完璧な美しさだ!顔は、普通だがなっ凹

寮から銀杏並木を真っ直ぐ進んで、講義棟まで歩いて行く。もちろんこっそり身体強化の魔法を使って日々鍛錬だ。



講堂でHRが始まった。

「皆さん、夏季休暇は有意義に過ごせましたか?

後期は、秋の芸術祭があります。

1年生は、主に先輩たちの見学になります。2年以降から文官コースと騎士コースに分けられますが、文官コースは社交パーティーの運営実施が主になり、研究発表や模擬店経営など幅広く催しされます。

騎士コースは、武闘大会が行われます。皆さんは見学です。

あなた方が参加できるのは盤上戯ですね。戦術を学ぶと言うことで、盤上戯で上級生に挑んでみるのもいいかもしれませんね。

皆さんは、上級生が準備している間は来年に向けての商業の流れや社交マナーやパーティー開催までの流れを勉強していきます。

それでは、講義に移ります!」


マダム・バレンティンは、今日も絶好調だ!

黒のタイトなスーツに、銀色のピンヒールそして手には教鞭ケインが握られてる。

このケイン、竹でできてるんだけど、黒くて光沢があってカッコいいんだ!!

マダムのひっつめ髪のせいでキュッと釣り上がった目と銀縁のモノクルで、知的女王様って雰囲気!

私は大興奮だ!!

ケインを振り落とす時になる音が最高なんだよ、うっとりするんだ。

パシって、すごいの。

知ってる?鞭の先端のスピードは音速を超えるんだよ?

戦闘機なんだよ!パシって音は、着地音じゃなくて空気を切る音なんだ!

私の担任がマダム・バレンティンでよかった!神に感謝を〜!!




「なあ、アリスン。お前は、文官コースに行くんだろ?ガーデンパーティーで行政府に興味があるって言ってたもんな。」


「ハスウェルは、騎士だから別のクラスになるね。残念だ〜、私の地が出せる少ない友人なのに。」


「騎士でもいいんじゃね?お前、活発だしさ。十分やってけるぜ!

なあ、騎士にしねぇ。ほら、第二皇女がちょうどいい年周りだから、近衛になれるんじゃないか?

うんっ、いい案だ!そうしようぜ。なっなっ?」


「あんた...騎士科に行くと脳筋ばかりで座学の単位が取れない可能性があるから誘ってるんでしょ?わかってるのよ、この馬鹿!」


「バレてるのかぁ....、騎士科に行くインテリ野郎っているか?いても俺と友達になってくれて面倒見がいいやついるか?可能性低くね?

可哀想だろう、騎士科にしようぜ〜。」


絶対騎士科なんて行かないわっ!!手加減が難しい。

きっと、女なのに上位に入って目立ってしまう....。くわばら、くわばら....。

平穏な人生を送るために騎士科には行かない!


文官コースなら、上位でも目立たないし?

文官一択ねっ!



...この時アリスンは、平凡に過ごせると思っていた。

がしかし、この後色々巻き込まれて予定が狂うのである....




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