兄と結婚するのが当然だと思っている妹に妊娠を迫られた件
しゆの
学校一の美少女である妹はブラコン
「ふわあ……おはよう」
朝になり、学校に行くために起きて制服に着替えた
テーブルには既に朝食の用意が出来ており、今年から海外出張で家にいない両親の代わりに妹であるいろはが作ってくれたのだろう。
今日から六月でいろはの制服は夏服だ。
「おはようございます。相変わらず朝は弱いですね」
起きても眠そうにしている裕介に、いろはは白い目を向ける。
いろはの言う通り裕介は朝に弱く、学校がある平日でも起きるのが遅めだ。
ゆっくりご飯を食べていたら学校に遅刻してしまうだろう。
「朝に弱いんですから、私に起こされるまで寝ていてくださいよ」
白い目をいろはがこちらに向けた理由は起きるのが遅いからではなく、目覚ましで起きたかららしい。
いろはは超がつくほどのブラコンで、朝は自分で裕介のことを起こしたいと思っているようだ。
前に起こしたいならもっと早い時間に起こせばいいじゃんか、と言ったことがあるのだが、どうやら実際には起こしているらしく、何故か裕介は決まった時間に目覚ましのうるさい音じゃないと目覚めない。
「俺も学校一の美少女であるいろはに起こしてもらいたいけどな」
学校一の美少女……ラブコメラノベで出てくる言葉であるが、いろははそう言われるに相応しい容姿をしている。
きちんと手入れされている腰より伸びているサラサラとしたダークグレーの髪は綺麗だし、長いまつ毛に右が金色、左が藍色のオッドアイ、整った微量に透けるような白い肌は誰もが見惚れてしまうだろう。
いろはの髪と瞳の色は生まれつきで、過去に血縁関係が近いいとこ婚をしたことがある家計で希に産まれてくるようだ。
実際にいろははかなりモテ、高校に入学してから二ヶ月ほどしかたっていないのに既に二十回ほど告白されているらしい。
裕介は一学年上だからクラスでのいろはがどうかわからないが、ブラコンを除くと優等生だから真面目にしているだろう。
「だったら目覚ましじゃなくて私の声で起きてくださいよ」
どうしても自分で起こしたいようで、いろはは不満そうに「むう……」と頬を膨らます。
いろはとは両親の再婚で兄妹になった義理であるが、昔から彼女は兄が欲しかったらしい。
いないのに兄に対して強い憧れを持っていたいろはの趣味は兄妹物のラブコメラノベを読むことで、毎日ネットや本屋で色々と漁っているそうだ。
今はネットで無料で読める小説も大量にあるし、いろはにとって夢のような時代になっただろう。
「じゃあ明日から兄さんは私に起こされてください」
何でいろははこんなに自分で起こしたいのかわからないが、面倒だったので裕介は「わかった」と適当に返事をする。
「ご飯食べよ」
せっかくいろはが作ってくれた朝食を冷ましてしまうのはよろしくないので、祐介はご飯を食べようと椅子に座った。
本日の朝ご飯は洋食で、テーブルにはトーストにハムエッグが並べられている。
「普通は二人で食べる時は向かい合うものじゃないのか?」
何故かいろははいつも家でご飯を食べる時に祐介の隣に座るのだ。
「いいじゃないですか。お父さんたちがいた時は兄さんの隣に座っていたんですし」
両親が海外に行く前は四人で食事をしていたため、その時の名残でいろはは裕介の隣に座るらしい。
特に問題があるわけではないのだが、距離が近いからいろはからは女性特有の甘い匂いが漂ってくる。
両親がいた時より明らかに距離が近くなっているのが原因だろう。
「いただきます」と言い、バターが塗られたトーストを食べる。
食パンをトースターで焼いてバターを塗っただけだから誰が作っても同じ味であるが、いろはが作った物だと思うと美味しく感じる。
裕介も重度のブラコンであり、いろはと一緒にいれる時間が何よりも楽しいのだ。
もちろん妹として好きなため、裕介はいろはを恋愛対象として見たことがない。
兄妹で恋人同士になるのは二次元だけだと思っているからだ。
「そういえば私好みのネット小説を見つけたんですよ」
いろはは左手でパンを持ちつつ、右手でスマホを操作する。
どうせ兄妹物の小説だろうな、と裕介は思いながら、いろはがスマホの画面を見せてくれるのを待つ。
ご飯を食べている時にスマホを弄るのは行儀が悪いが、ここが家なのと、ブラコンである裕介はいろはに注意はしない。
流石に外でしていたら注意をするが、優等生たるいろはは家以外ではしないだろう。
「これです」
スマホの画面を見てみると、案の定兄妹物の小説だった。
ネット小説は膨大な数のせいでタイトルだけでどんな内容か分かるのが多い。
裕介もいろはほどじゃないにしろ無料で読めるネット小説を読んでおり、基本的にはラブコメを漁っている。
ラブコメであれば幼馴染みや先輩、後輩、兄妹物と幅広く読む。
ただ、いろはが見せてくれた小説を読みたいとは思わなかった。
「この小説は主人公が兄さん、メインヒロインである妹が私みたいでいいんですよね」
いろはがお気に入りと言っている小説は、裕介が自分自身で書いたものだから読みたくないのだ。
内容は分かっているし、投稿されている自分の小説を読みたいとは思わない
ラノベが好きな裕介は自分でも書いてみたいと思い、大手小説サイトに会員登録をした。
いざ書こうと思っても中々内容が思い浮かばなかったため、自分と妹をモデルにして書いたのだ。
もちろん名前は変えてあるが、ついにいろはに見つかってしまったらしい。
そこそこポイントを稼いでランキングに載っていたので、見つかるのは時間の問題だとは思っていた。
「更新されたらすぐに読んで感想を送っています」
よほどお気に入りの小説のようで、いろははうっとりとした表情になっている。
ヒロインが自分自身みたいで共感できます、という感想が来たことがあるのを覚えていて、恐らく……いや間違いなくいろはからだろう。
いろはからしてみれば、似ている容姿で感情移入がしやすいようだ。
裕介がネット小説を書いていることはいろはには秘密にしている。
特に言う必要はないかと思っているし、身内に知られるのが恥ずかしいからだ。
「そうか。まあ食べよう」
スマホから目を離さないいろはに言い、裕介はご飯を食べた。
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