ホラー

お粉さん

お粉さん 1

これは私の町のとある、スーパーでの出来事でした。

いつものように夕方、買いものをしていると、不思議なアナウンスが流れてきました。 


「毎度~ぉ、お買い上げ~、ありがとうござぁいますぅ。

当店はぁ、8時で閉店となりまぁ~す。 お時間も~ぉ、残すところぉ僅かとなりましたのでぇ、皆ぁさん、お気をつけてぇお帰り下さ~い」


 どうも耳障りと言うか不気味なイントネーションのアナウンスだった。 

おじさんの声なのだが、良い事があったのか、語尾が上がり下がりしていて気持ち悪い。 


 それに、私は18時過ぎに来ているつもりだったのだが、もう閉まるらしい。急いで出なければならない。 だけど、奇妙なアナウンスは、まだ続いた。 それが、私への恐怖の始まりだった。


「皆さま、この時間、お粉さんが歩いて~ぇおられます。 彼らはこのスーパー内に三人。 全身が真っ白ですが、一人は~ぁ、中年のおじさんのお粉さん、ひりは~ぁ、大人の女性のお粉さん、そして子供のお粉さんです 」


 お粉さん?、……。 そんなものは聞いた事がない。 


「気を付けてください。 彼らはふらふらと徘徊しておりますが、憑りつかれると、体中から白い粉(ふけのようなもの)が永遠に出続けます。

くれぐれも憑りつかれないようにお気を付けて、お帰りください」


何とも迷惑な話で、憑りつかれたくもない。想像しただけでぞっとした。 

 と言うのも、私もアトピーを持っているので、そのような経験があるからだ。

 『白い粉』が出ると聞いた時から、それが浮かぶ。

 顔中の皮と言う皮が乾燥したように捲れてくるのだ。 頭皮からも出て、とつもない痒みとただれ、ヒリヒリ感が襲い、少しでも頭を振ろうものなら溜まり溜まった粕が、フケの様に辺りに落ちてくる。 それはとても不快で仕方がない。 お気に入りの服にも細かい白い皮が沢山ちりばめられるのだから。   だけど、どうしようもない。 治るまでは。だからアトピーは大変だ。


 私はさっさと帰ろうとスーパーを後にすることにした。 お客さんも数人ちらほらと歩いてるが、お粉さんなんて見たことはない。 憑りつくんだ。ぐらいに思っていると、見てしまったのだ。 間違いなくあれが、アナウンスで言っていた、お粉さんなのだろう。 


 容姿や姿なんて本当に中年のおじさんで、普通に歩いている人と変わらない。 誰を襲う訳でもなく。ほんとうに徘徊していると言う言葉があっている感じだった。 ただし、全身が白い。 色が全くないのだ。 髪の毛や鼻の穴など黒い所は黒いが後は全身服ごと、白い。



 あれがお粉さんか。 私は憑りつかれると聞いたので、目を合わさないように普通に歩いて過ごした。 

 すると女性のお粉さんが歩いているのも目にした。 彼女もフラーっと普通に歩いていて、どこか目的がなさそう。 帽子をかぶっていて、いかにも女性と言った感じで、スーッと歩いてる。 丁度エスカレータを挟んで奥のくの売り場にいた。


 別の他のお客さんと当たる事もない。ただスーッと歩いている。 


 私は、まっすぐ出口を目指した。 


 これが何の縁か、知らずのうちに、お粉さんを二人も見れた訳で。 


そう言うモノなのかわからない。 しかし、これがまた嫌な予感が過るもので。 


  子どものお粉さんだけ見てない。 


 そう思った矢先の事、 私の横に子供のお粉さんが立っていた…………

 おかっぱ頭の小学校低学年ぐらいの女の子だ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る