まいにちかさま

第1話 結婚

2016年10月、私はカサマになった。

嬉しさと“ああ、もう「千葉県出身の千葉で〜す♡」の社会人になってからのテッパン自己紹介はできないんだなぁ”とかそう言う漠然とした寂しさがあった。

役所の女性の淡々とした口調で事前に書いてきた婚姻届にどんどん修正跡が付いていくのを見ながら隣の夫になるケンちゃんをチラッと見た。

少しバツの悪そうな横顔に“こいつも私と同じでムードもへったくれもないなって感じてるな(笑)”と思った。

役所の女性に事務的な全然気持ちのこもっていない「おめでとうございます。」に見送られ役所を出ると母が「出来た〜？」とニコニコしながら近寄ってきた。

車のない私達は家から結構な距離がある役所に母の車で連れてきてもらっていた。

ちなみに車がないどころじゃない。

車もなければ貯金もない、貯金もなければ家もない。

ついでに言えばたった今夫になったケンちゃんと添い遂げる自信も既に無かった。