第406話 20人以上のクサンデル氏

宰相がしばらく様子を見て、訓練場での動きがない事から、


「クサンデル殿の動きがないようなので、常山公爵の勝利とみなす!」


という言葉で、僕の勝利が決まりました。


僕は魔法を解除し、魔法を駆使しクサンデル氏を一か所に集めます。


我ながら何を言っているのだろうと思いますが、そうとしか表現のしようがありません。


うーん、どう見ても同一人物。それが20人はいます。


何故こうなったのでしょう?


すると何を思ったのか、ヨランデ女史がロンパースをオイヴィに渡し、こちらに駆け寄ってくるではないですか。


警戒するも、どうやらクサンデル氏の所に来たようで、


「お兄様が一杯!お兄様エキスがあ!!」


とかよくわからない言葉を発した後、


「これは違う、これも違う!」


とか言いながら、クサンデル氏を持ち上げては投げ、持ち上げては投げを繰り返しています。


「邪魔!これもポイ!」


一体何をしているのでしょう。

何やらクサンデル氏を持ち上げては投げ、持ち上げては投げの繰り返しのようですが、このクサンデル氏に違いがあるのでしょうか。


そして最後の一体になったところで、


「あ、あったあった。おーい、起きろ!」


あったって・・・・


そしてぺちぺちと顔を叩いています。


「起きないなら、キスしちゃうぞお?」


いい大人の女性が、兄にキスするとかこの女性大丈夫なの?

それともこれがこの世界の一般常識なのでしょうか。


「うう・・・・は!ヨランデか?お、俺はどうしたんだ?」


どうやら気が付いたようです。


「倒れちゃったのよ。」


「そうか。で、俺はなぜこんな所で倒れているのだ?」


「そんな事より歩けそう?」


「ちょっと待て。立ってみる。ヨランデ、支えてくれ。」


どうやら立てるようです。

そして周りを見るクサンデル氏。


「どうやら妹が迷惑をかけたようだな。すまぬ。」


「歩けそう?」


「なんとかなる。」


そう言って妹の肩を借りて歩き始めるクサンデル氏。

そのまま訓練場を出ようと出口に向かっているようですが、


「ちょっと待て!」


するとクサンデル氏が僕の方を見て、


「何か用か?」


何か用って、この人このまま帰るつもり?

色々突っ込みどころ満載だけど、まずはこの20人からなるクサンデル氏をどうにかしてほしい。


「これどうするつもりなんだい?」


「これってなんだ。」


僕が指で示した場所を見るクサンデル氏。


「これが何か?」


これが何かと言われても、どう見ても貴方ですよ。


「まずは片付けて下さい。」


「片付ける?何を片付けろというのだ、貴公は変わった御仁だな。俺には関係がない。好きにしろ。」


僕はこの時クサンデル氏にまたしても違和感を感じます。


それに好きにしろってどうするのこれ。


すると、

「じゃあ私がもらってもいい?いいよね?」



残念な女性が残念な表情をしながら残念な事をしようとしています。


「オイヴィ、とめてあげて。」


「わかった。ヨランデ殿、そこまでだ。」


「ちょっ!いい所なんだから!先っちょだけだから!」


有無を言わさず首根っこを掴んで残念な何かを運ぶオイヴィだった。

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