第383話 勇者召喚 その3

国王は杖に手をかざし、体に魔力を込める。

そして周りにいる魔術師、王族を見渡す。


今現在召喚の儀に参加している面々だが、国王以外は全員横たわっている。


今はまだ自力で動く事ができるのだが、召喚の議が始まってしまえば生き残るにしろ、死んでしまうにしろ、全員その場に倒れる事になるからで、生き残った場合は倒れると頭を強打する可能性があり、転倒する事の無いように、あらかじめ寝かされているのだ。


頭を打たずとも、骨折をしたりと厄介だからだ。


それに、助かった人間を医務室に運ぶのにも、あらかじめ寝かされていた方が楽なので、ベッドを用意し全員寝ている。国王は立って杖を制御する必要があるので、立ち続ける必要がある。


「では始める!」


国王は杖に魔力を送りつつ、杖を通して勇者を探していく。


ほんの数分で勇者を発見し、勇者を補足する。


「勇者を発見した。今より魔術師は全員魔力を杖に送れ。王族はこの杖が制御するだろう。」


国王は皆に語り掛け、杖の制御を切り替える。


すると魔術師は全員意識がなくなり、動かなくなる。

そして国王だが・・・・


「まだだ!もう少しだけ!」


杖にはどんどん魔力が込められるが、それでも本来必要な量の半分に満たない。

「やはり足りぬか!これで実行するしかあるまい!」


この魔力では勇者のみを召喚する事は無理で、今現在勇者の近くに居る人々を巻き込んでしまう事となる。

それに、召喚の儀の参加者の命を守る制御も働かないので、この後どうなるか。


「は・・・・発動!!」


国王は召喚を発動させる。


すると、その瞬間から国王には魔術師と王族の魔力の残りが全部入りこむ。

「うがあああ!!!!」


国王は自身の許容量以上の魔力がどんどんその体に入り、そしてその魔力は全て杖に向かう。


国王は立ったまま絶命していた。


全身からは血が噴き出し、その血は沸騰し始める。


国王は死してなお倒れる事は許されず、物凄い熱気と共に皮膚がただれていく。


そしてそれを前後するかのように、魔術師も全員絶命していた。


実際どちらが先に死んだのかはもはや誰もわからない。


そして王族。

国王に近い王族は国王の兄弟姉妹。

その後は子供。


国王の近くに居た王族は、近い順にどんど意識を失い、そのまま動かなくなる。

国王の長男も例外ではなく、全身から血が吹き出し、体が発熱し死んでいく。


そしていよいよアーダの所まで来たのだが、その前にアーダの夫が先に影響を受ける。


このアーダの夫、体がでかく巨漢といわれるほどの体躯。


そして彼はずいぶん持ちこたえた。

全身から血を流し、国王と同じく血が沸騰し始めるが、元々体が大きいゆえにその許容量も大きく、そのおかげか、アーダの所に影響が来る前に、召喚の儀は終わり、杖は国王と主にその役目を終え、粉々に砕け散った。

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