第156話 テイム

並行世界では、色んな動物をテイムしました。


色んなというか、せいぜい馬ぐらいの大きさまで。

え?馬は大きいよって?

うん、そうなんだけどね・・・・


ここに横たわっているフェンリルは、優に全長3メートルを超えていて・・・馬より一回り大きいい狼みたいな、白い毛並みのその獣は・・・・


【息子に連れられてきたのは何者かと思えば・・・・ヒトではないか。】


頭に語り掛けるその魔獣?だよね?


立派なフェンリルは、力なく僕の頭にかな?念話で語り掛けてきます。


【魔王にやられたって言ってたけど?】


【ああ・・・・ほんの数刻前じゃが、いきなり魔王がやってきてな。”くそ!人間ごときが我にこのような・・・・ああ、あれで良い、あいつで憂さ晴らしじゃ!”とか言いながら、突然我に襲い掛かってきたのだ。】


・・・・ごめん、それは・・・・僕の所為だね。


その後の念話で、フェンリルは何とか魔王の攻撃をしのいでいたのだが、いかんせんいきなり深手を負ってしまい、

後は防戦一方・・・・


気が付けばこの地で倒れていたのだとか。


気が晴れたのか、満足した魔王は去っていったそうな。


そしてこの辺りは縄張りではないらしく。本来はこんな人の往来のある街道付近に、滅多に姿を現す事が無いそうで、だが深手を負ったせいで身動きが取れないらしい・・・・


一応自然に回復するらしいが、あまりの深手に、回復が間に合ってないらしく、今は死を待つのみだとか・・・・


【治そうか?】


【人に我を回復できるものか・・・・まあ試してくれるというなら、もはや避ける事もできぬゆえ、勝手にするがいい・・・・】


・・・・え?上から目線?

でもなあ・・・・

【じゃあさ・・・・回復したら、僕らの従魔になってくれない?】


【ぬ!まさか我をヒトの従魔になれと申すのか!】


【このまま死ぬを待つよりはいいと思うけど・・・・】


【ぬ・・・・抵抗できぬ・・・・其方何者だ?ただのヒトではないな・・・・まあよい・・・・どうせヒトの寿命はすぐだからの。たかが数十年、付き合ってやろうではないか。】


・・・・どうして上から目線なのでしょうか?


まあいいです・・・・

僕はフェンリルの頭の近くに座り、手をかざします・・・・


そして・・・・回復を・・・・う・・・・頭が痛い・・・・


「じゅ・・・・順平さん?し・・・・しっかり!」


友郁が僕を支えてくれてます・・・・


・・・・

・・・

・・


気が付けば・・・・僕は白い毛に覆われていました。


【気が付いたか。其方は我の主となったのだ。そして今、我の背に乗っておる。どこか街に行きたいのであろう?】


「あ、よかった・・・・そ、そうです。どこか街へお願いします。」


友郁は心配そうに僕を見ていますが、

「ちょっと頭が痛くなっただけだから、心配しなくていいからね。」


「それならいいのだけど・・・・」


僕は移動手段を見つけました。


【主よ、我を移動手段とか酷いではないか!】


事実ですから・・・・

しかし、すごいなフェンリルの背って。

気を失っていた僕を、安定して運んでくれるんだから。

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