第51話 弓スキル
「うわあ・・・・いいなあ伊知地さん。私なんて弓スキルですから。戦闘以外にどう役立つのでしょうね・・・・」
あ・・・・これは・・・・彼女は吉安さんでしたか。
「え?でも吉安さんの方がかっこよかったですよ?道具を使えるんですから。」
「でもあれどう考えても戦闘向きです・・・・」
・・・・弓ですね。普通に考えて戦闘です。彼女はそれを嫌ってますね・・・・
「・・・・あの吉安さん、ちょっといいかな?」
「え・・・・ええ、何でしょう?」
「吉安さんは弓スキルですよね。」
「・・・・はい・・・・」
「ええとですね、日本では、弓とは言いませんでしたが・・・・僕が知る限り、2つの存在があるんです。」
「えっと・・・・2つですか?」
「ええ・・・・おそらく名前は知っていると思いますが、一つは、アーチェリー・・・・日本的に言い換えれば洋弓ですね。そしてもう一つ・・・・日本的にこの感じで言い換えれば和弓、つまり弓道です。」
彼女はあっ!とした顔つきになりました。
他の3人の女性も。
「・・・・そうです、どちらも競技です。それも各々違う競技で、アーチェリーは遠くの的に矢を放ち、ポイントを争いますが・・・・弓道も、無論的の真ん中目指して矢を放ちますが、どちらも言える事は、精神を落ち着かせ矢を放つ、という事です。」
あ、吉安さんの顔つきが明るくなりました。
「す・・・・すごいです常山さん。私そんな事考えてもみませんでした。弓道ですか・・・・袴姿で凛々しい女性が、落ち着き矢を放つ・・・・確か道とつく言葉の通り、道を示すのですよね。」
「ええと・・・・そうですね。道を示すというのが具体的には僕にはピンときませんが、礼儀作法を学ぶのが弓道ですね。まあ、心身を鍛錬するのでしょうね。」
あ・・・・今度は目が輝いてます。
そして女子高生3人が、何か目を輝かせてます。
「すごいです常山さん。どうしてそんな考えができるんですか?私達それはものすごいショックだったんですよ?」
「ええと・・・・ですが、まあ、要は考えようという訳ですよ・・・・ってあれ?侍女さんそれは?」
いつの間にか侍女さん、何か大きい物を持ってきました。
「弓と矢、そして的ですわ。」
・・・・どうしろと?
「あ、ここに立てかけますから、どうぞ好きに矢を放って下さい。」
「ここ食堂・・・・ってさっき散々やらかしましたね。どうします?そういう考えで一度矢を放ってみませんか?」
折角です。彼女の心の安定、安らぎの為にもここはあえて矢を放たせるべきでしょう。
「ええ!やってみます!」
今回は10メートル、先ほどの距離に的を置いてもらい、吉安さんが矢をつがえ、放ちます。
うわ・・・・全部真ん中付近だ。
「さあ、次は常山さんですよ??」
「・・・・ねえ、今の見て同じ事が僕にできると?」
あ、しまった・・・・
「大丈夫です!先ほどの投擲と同じですよ?指先に集中すればきっと行けますよ?」
・・・・多分これ小さいので、ショートボウというのでしょう。それでも戦闘用なので、殺傷能力もそれなりにありそう。え?これ訓練用ですか・・・・
僕は吉安さんに言われた通りに、指先に集中し、矢を放ちます。
的は大きいので、全部当たりましたが、ずいぶんばらけました。
「うわ・・・・見事に差を感じますね。どうですか?少し落ち着きましたか?」
「ええ!落ち着くと言いますか、興奮しちゃいました!」
「あ・・・・それは何というか・・・・もし弓道なら駄目だよね・・・・そのごめん。」
「いえ!そうではなくてですね、今まで厄介なスキルと思っていたのが、今は色んな意味で役に立ちそうなので、嬉しいのですよ。」
・・・・よかった・・・・
ですが吉安先生容赦ない。
「真ん中に当たるまでひたすら放って下さい・・・・鍛錬ですから。」
何やら喜んでいるようですね。
そして・・・・数十の矢を放ち、やっと安定して真ん中付近に命中するように。
「わ・・・・他の人の矢がそんな風に、真ん中に命中させるのを見るのもいいですね。」
よくわからないけれど、彼女も表情が明るくなったようですのでよかった・・・・
ですが才村さんの表情があまりよくありません。
「才村さんどうしました?」
「・・・・私、負けませんから!」
・・・・ええと、才村さんは何と勝負しているのでしょう?
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