月紅の鬼姫

松川巫雪

序章

 かつて…

 この大陸には、二人の女王が存在した。人間の王を月姫つきひめ、妖の王を紅姫べにひめと呼んだ。


 人間と妖は日々、小さな争いを繰り返していた。そんな中、二人の王は約束を交わし、争いのない平和を手に入れた。お互いに別の国を作り、妖の国は外部からの姿を隠す事で、平和を保っていた。


 しかし、その平和もひと時で終わる。ある一人の妖の手によって…

 その戦によって、美しい妖の王は命を落とした。たくさんの妖に囲まれ、亡骸を封印された彼女は、永遠にその地に眠るものだと誰もが思っていた。



 だが、所詮は理想の話。実際には、封印は破れ、王の亡骸は消えて亡くなっていた。封印の形跡だけを残したまま…





 それから時は千年。その間、眷属達は王と裏切り者の妖を探し続けたが、見つからず。王の血をもらえない彼らにとって、千年という時はあまりにも長く、限界が近づいていた。


 古の盟約めいやくにはこうある。

『千年の時経ち、悪を撃ち、再び集結せん時、王復活の兆し見えたり』

 と、これは妖の王が最後に残した言葉。千年経てば王が復活する。その希望を胸に、妖達は今も尚、生き続けている。死ねない呪いを背に焼いて

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る