23ページ目:指先の夢

足りない 足りない

夜毎 胸の奥から声がする

心に開いた穴は

覗き込んでも底知れず

月明かりすら届かない


欲しいわ 欲しいわ

何をと言わないその声は

焦燥ばかりを煽り立て

身体は 頭は

膿のような熱を孕む


助けて 助けて

膨れ上がった熱は

何時しか指先まで支配する

抗う術など知らず

ただ 細く細く声を上げた


瞬く度 涙は零れ

頬を滑って唇を濡らす

心は答えを教えないまま

足りない 足りない

叫びばかりを繰り返す


持て余した熱で

溶けてしまった夢を見る

触れては離れなぞっていく

誰かの 指先の夢を

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