22ページ目:沼底の真珠

底には真珠が眠っているんだよ

そんな誰かの言葉を信じ

僕は暗い沼に飛び込んだ


光も差さぬ闇の中で

手探りのまま底をさらう

けれどこの手に掴んでも

暗がりに隠れたそれを

真珠だと思うことは出来なくて


掴んでは離し

掬い上げては落とし

僕は闇色の水の中

どこにどこにと泳ぎ回る


既に離してしまったそれが

本当は真珠だったのか

それとも未だ

底に真珠は眠ったままなのか

月も差さぬ太陽も逃げた

こんな暗がりの中では

判ずる術も無く


それでも僕はずるずると

諦めることもできずに

泳ぎ続けている


どこか遠く沼の外で

悲しい子だねと

僕を笑う声がした

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る