3ページ目:彼と女神

見るものも聞くものも

そして紡ぐこの言葉すら

全て既に誰かのもので

こうして私が

見るのも聞くのも紡ぐのも

全て無駄でしかない


こんなに苦しんでいるのに

全て無駄なのか と

叩きつけるように彼は叫ぶ


ならば と女神は問う

見るための瞳も聞くための耳も

紡ぐための唇も

あなたには要らないものか

こんなに苦しむのなら

そこから取ってあげましょうか と


ああ是非ともそうしてくれ

悲鳴を挙げ意識を手放した彼を

女神はそっと抱きしめた

馬鹿な子 と言葉を零し

けれど何て愛しい子 と

胸の内で言葉を響かせる


目を覚ましたときに

彼は一体何を思うのか

悲哀か後悔かそれとも安堵か


胸に抱いた彼へ思いを馳せて

女神は彼から瞳を耳を

そして唇を奪い去る

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