11日 【掌編】うちのクラスの田村がスマブラに参戦した
マリオが跳び上がりざまにパンチを放つ。リンクはそれを躱し、逆に剣を振るってマリオを攻撃した。ダメージを受けるマリオ、だが傷は浅い。すかさず手からファイアーボールを発射し、リンクに火傷を与える。互いに距離をとるマリオとリンク。睨み合い、そして数瞬後――――両者はダッシュし間合いを詰め、スマッシュを放とうとした。
しかし。
上空から襲い来る人影が、ぶつかり合わんとするマリオとリンクに一撃を見舞い、ふたりを遥か遠くへ吹き飛ばす。
その人影こそ。
3年A組きってのフツメン、唇の下のほくろが目立つ、いつもメガネの気取った少年――――
_人人人人人人人人人人_
> 田村和夫、参戦! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
「いやいやいやいや」
僕は手を横に振った。
「ありえない。ありえないよ」
「それがありえてるんだなーこれが! ほら見てみ! 隠しキャラで田村が選択できるようになってるんだよ」
そう言って河原がTVに映ったスマブラのキャラ選択画面を指さす。いくら僕が目をこすり頬をつねっても田村はそこにいる。他のキャラと違ってかなり実写寄りのグラフィックなのでなんかきもい。
河原は田村を選択したり選択解除したりを延々と繰り返した。
タァムラァ!! タァムラァ!! タァムタァムタァムタァムタァムタァム
「うるさいな! わかったから……わからないけどわかったから田村コールやめろ」
「田村は強キャラだからオンライン対戦での使用率も高いんだ。対戦相手全員田村とかけっこうある」
「嫌すぎる」
「おまえも田村使ってみろよ。初心者でも田村を使えば中級者くらいっぽくなれるぜ」
半信半疑で田村を選択し、次にステージを選ぶ。河原は勝手に『会津若松』を選んだ。
「会津若松!?」
「田村の地元だから実装されたらしい」
「それで納得できたらよかったがな」
「おっと、喋ってていいのか? 俺はいつでもその舌を切り刻めるぜ?」
「えっいきなり何」
「ああ、これ田村の名言な」
「知らねえよ」
対戦が始まった。とりあえず僕は田村を操作してその場で必殺技を出してみようと、Bボタンを押す。
田村の体がその場でヴンとぶれるだけだった。
「これは?」
「それはカウンター技だな。ぶれてる時に攻撃を喰らったら発動する技。ちょっと試してみるか?」
河原が操るリンクが、スマッシュ攻撃を放った。僕は田村を操作しカウンター技を発動する。
田村にリンクの斬撃が当たったと思いきや、田村の体はぶれて消え、いつの間にかリンクの背後に回って首筋に天叢雲剣をひたりと添えていた。
『残像だ』
田村が囁いた次の瞬間、最強絶滅斬が炸裂し、リンクは大ダメージを受けた。
「もはや田村じゃないだろ」
「この田村のボイスもちゃんとスタジオで収録したんだってさ、山寺宏○さんが」
「もはや田村じゃないだろ!!」
「ういーす、お邪魔しまーす」
「お、本物の田村来た。スマブラやろうぜー」
「やろうぜやろうぜ。……ん?」
河原んちに遊びに来た田村は、TV画面を見た。
画面では田村が奥義・伝説滅亡斬でリンクとカービィとマリオを同時に葬っていた。
「オワアアーーーーー!?!? 俺がゲームに!?!?!?」
「無許可だったのかよ!!」
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