えぇ! 乙女ゲームの悪役令嬢になっちゃった……

にのまえ

プロローグ

 三度の食事を忘れるくらい、どっぷりと乙女ゲームにハマっていた。

 その中でも『魔法学園、私はあなた達と恋に落ちる』第一王子セルバード・ロベルト様が一番の推しなんだ。




 * 




「……っ!」


 眩い光を感じて目を開いた。


(えっ⁉︎)


 ここは、どこなの? と叫びたくなるような、幻想的な景色が目の前に広がっていた。

 シャンデリア? ドレス? 


 それは乙女ゲームの中でよく見る、中世風の舞踏会のシーンのようだ。


 しかし、ゲームの様に静止画ではなく動く世界。

 この生演奏はどこからか聞こえてきてるのだろうか?


 その生演奏に合わせて中央でダンスを踊る、華やかなタキシードやドレスを身に纏う……貴族のご子息とご令嬢達。


 わたしまで彼らに混ざりドレスを着ていた。


(何がどうなっているの?)


 会場に用意された料理までしっかり食べれるし、味までわかる。

 彫刻に壁画にまで触れる。


 ある日、目が覚めたら見知らぬ異世界だった? とか。


 よくある転生の小説?


 そんなことは嘘だと、ほっぺをつねってみたけど地味に痛いだけ。

 転生だとしたのなら、このゲームでわたしの役どころはなに?



(モブかな?)



 モブしかないよなぁ。いやーモブのほうが楽ちんだよ。



 周りがざわざわしたした。近くの女性が声をあげる。

 


「いま扉の前に、セルバート殿下がご到着されたみたいですわ」



(セルバード殿下?)



 どこ、どこ、どこ、どこにわたしの推しがいるの?

 きょろきょろ辺りを見回していた。



「「王太子ゼルバード様が、ご到着されました!」」



 騎士の声が会場内に響き、近くの扉が開く。


 その開かれた扉から現れたのはわたしの推し。

 第一王子セルバード様! と悪役令嬢ミニーノが登場するのかと思ったのだけど違った。


 セルバード様はピンク色の髪の女性をエスコートしていた。


(あの子、ヒロインじゃない?)


 もしや、これは最後の舞踏会。

 いまからゲームの様に、婚約破棄の場面が見れるんだと二人を眺めていた。



(ん?)



 なぜ、彼らはわたしを見ているの? 

 どうして、わたしを物凄く睨んでいるの?



(まさかねぇ)



 その予感は当たる。



「よく逃げずにきたな、公爵令嬢ミニーノ・カッツェ! 今日を持って貴様とは婚約破棄をする。俺の愛しのローサに自分が何をやったのかを、その小さな胸に手を当てて考えてみろ!」



(ん? 小さな胸? 本当だ小さい)



 それ以外は婚約破棄の場面で、セルバート様が悪役令嬢ミニーノに向けて言うセリフと同じだ。



 ちょっと、そのセリフを王子はわたしを見ながら言ったんだけど。



「聞いていたか、ミニーノ嬢!」


 

 

(わたし! ミニーノなの⁉︎)



「「えー! やだ、やだ、やだ、あんなに貴方に貢いだのに(主にグッズ)ヒロインがいいよぉ!」」

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