16配信目 【#魔王様の宴】5万人記念で凸待ちじゃ!【キラキライブ/ニーナ・ナナウルム】3

レイ・ブレイブ:

その勇者、私じゃないわ~



「なん…じゃと……!?」



 思わず声に出してしまった。

 それくらい我にとっては衝撃的だった。


 おかしい、たしか勇者レイ・ブレイブは現在ゲーム配信中のはずじゃ…!

 キラキライブ公式アプリで各配信者の配信スケジュールも確認したし、なんならレイのトゥウィッターも見て確認したぞ!?


 ライバーにバレるのは想定内じゃが、勇者! お主にバレるのは完全に想定外じゃ!

 それにまだ凸待ち3人目じゃ! 6~7人目くらいまでは行けるという我の目論見が外れるなど、有りえぬ!

 真根さんとも確認した、我のこの完璧でパーペキな作戦に穴などあるはずがないのじゃ…!


 普通に考えて、配信しているライバーがこちらの配信を見ることはない。

 リスナーも二つの配信を同時視聴するやつなんてほぼいない……と思う。


 その、はずなのに……!?




 リスナーだけじゃなく、キラキライブのライバー達にもちょっとしたイタズラをプレゼントしようと、真根さんと綿密な打ち合わせをしてある。


 凸待ち配信に出演させるライバー本人に連絡をするべきか迷ったが、言わないほうが面白くなると思う、という我の意見を真根さんは尊重してくれた。

 まあ、ライバーのイメージダウンになってしまわないよう、口を酸っぱくするくらい真根さんに「発言には注意してね!」と釘を刺されたが。それでも我の願いを精一杯叶えさせてくれようとする真根さんはやはり優しいのじゃ。


 ゲリラ的に5万人記念配信の内容を発表したのも計画を上手く運ぶためだ。

 何日も前に『凸待ち配信をします』なんて言ってしまえば、レイやリリィ、その他のライバーが自分の配信時間を少しずらして、我の凸待ち配信に来る可能性があったのじゃ。


 ……まあ、今世の我、別にそこまで人望ないから自分の配信時間ずらしてまで来る稀有なやつなんているとはあんまり思わんが…… まあ、早々にバレてしまわぬよう、念には念をいれた。


 それがどういうわけじゃ?

 なぜレイがコメントしている……?


 ……まて、おちつけ、我。

 別にこれは致命傷じゃない。そうじゃ、まだ舞える…! こんなにも早くほころびが生じるとは想定外じゃが、まだ戦える! 余裕のよっちゃんじゃ!


 そう! ニセモノが本物になってしまえば良いのじゃ!

 何という妙案! さすが我! まっこと天才じゃ!



:ふぁ!?

:勇者が二人……! 来るぞユウマ!

:なん…だと…!

:どういうことw

:いったいなにが始まるんです?

:勇者がコメント欄にいるんだがw

:ドッペルゲンガーですかね

:素晴らしい『なんだと』イタダキマシター



「まて、皆の者。えーっと…… いいか、このコメントの勇者は幻影じゃ。そう、お主らが生み出した幻影じゃ。いわゆる集合的無意識からくる共有された幻影じゃ…!

 さあ、レイをかたる幻影よ! 静まりたまえ! 静まり給えぇぇぇええ!」


:あせってるあせってるwwwwww

:幻影は草

:苦しすぎるw

:幻影は無理じゃろ

:ニセモノって言うけど、本物のアカウントなんですよコレ

:垢本物だからその言い訳は苦しいwwww

:でも魔王様と喋ってる勇者の声本物だしなぁ……

:勇者に声がそっくりの友達とか?

:魔王様友達おらんやろ

:↑やめろよ……



「そうじゃそうじゃ! 皆の言う通り、こちらの勇者が本物じゃ! のぅ?勇者?」


「ええ、魔王様の言う通り私が本物よ~? 天使様もそう思うでしょう?」


「あったりまえだぜ! この勇者が本物だぜ! うそじゃないぜ!」


:どういうこと???

:?????

:頭が混乱してきた…

:勇者のアカウントが乗っ取りにあってるとか?

:コメントが偽物なん?

:?

:(^q^)ぇぁ?



「ふふふ、どうじゃ? 幻影の勇者よ、そなたが本物だというのなら、そのことを証明できるかのう?

 出来ないじゃろう? そう、出来ないのじゃ! なぜならこちらには勇者の『声』がある! そなたは『文字』だけじゃ! ふふふ、フハハハハハハ!!! 理論要塞セオリティカル! 貴様にこの城を攻略できるかのう? フハハハ!!!」


:魔王様が魔王様してるw

:テンションがおかしいw

:いや絶対魔王様ウソ付いてる

:どうやっとるんや…

:声真似とか?

:いやでもここまで声真似で似せるのとか無理やろ

:1人ならまだしもノゾミちゃんや天使もいるしな……

:声真似が超絶上手い魔王様、あると思います。



レイ・ブレイブ:

一つ、質問いいかしら~?



「なんじゃなんじゃ? ほれ言うてみ? 特別に許可しようぞ」



レイ・ブレイブ:

私、のことをって呼んだことないのだけれど



 ――え? マジ?


 確かに我に対する一人称が分からず、我に呼びかけるとき一瞬逡巡しゅんじゅんしてしまったが…… え、皆、我のこと魔王様って呼ぶんじゃないの?

 ……あ、いや、ノゾミちゃんとか我のこと『ニーナちゃん』って呼ぶじゃないか?! 何たる不覚ッ! 我の完璧な事前調査にも抜けがあったということなのか……!


 じゃ、じゃが、まだ焦るような時じゃない。

 そう、相手に対する呼びかけ方くらい、日によって変わることだって、なくもない……だろう!



「い↑、いやぁ、勇者はきっと5万人記念配信という、ある種格式あるもよおしに合わせて、呼び方を『魔王様』にしてくれたのじゃろう?」


「そ、そうよ~? 親しき仲にも礼儀ありという格言もあるわ~ ニーナちゃんの言う通りよ~?」


:苦しすぎて窒息死しそうwwwwww

:魔王軍の勇者が焦ってるw

:魔王様、息、してる?w

:勇者が焦ることはないから、やっぱり嘘じゃないか!

:草


レイ・ブレイブ:

じゃあ、もう一ついいかしら~?


「な、なんじゃ…… ま、まだあるのか……」


:勇者に魔王が怯えてるwwww

:明らかに焦ってて草オブ草w

:草

:怯えてるやんw

:蛇に睨まれたかえるかな?w


レイ・ブレイブ:

どうして立花ちゃんがお茶をこぼしたことを、知っているのかしら~?


「な、なにを言って……   …ッ! そ、それは…… きっと我の配信を見て知ってじゃな… のぅ?」


「そそうだぜ! ああたり前田のクラッカーなのだじゃぜ!」



レイ・ブレイブ:

ニーナちゃんはそのことを配信でもトゥウィッターでも言ってないわ~



 我は思わず天を仰ぐ。

 あかん、我、完全にやらかしてもうてるんじゃぁ…


 さっき焦って立花と天花の話に方向転換したときに、リリィと我はこう言ってしまった。

 『六花がお茶の入ったコップ倒したときも可愛さでぜ!!』

 『そうじゃのう! 怒るべきところじゃったが、あんなつぶらな瞳で見られたら怒れんわい』


 アウトじゃぁ……


 ――い、いや、ま、まだじゃ! 諦めるな我!


「じゃ、じゃが、こちらで勇者がしゃべっているのはどう説明するんじゃ? ほれ、説明無理じゃろう? 無理…じゃよね……?」


:弱気になるなwww

:ふんばれよw

:語尾が弱いですよ

:逆に言えばそこしか対抗手段ないやんw


レイ・ブレイブ:

ニーナちゃん、声真似が上手ってマネさんから聞いたわ~



 真根さぁぁぁああああぁあん!!!

 いや、確かに我、面接のときとかに声真似できるとか言っちゃったけど! 真根さんもそのこと知ってるけども!!


「い、いやぁ… そんなに上手くないのじゃけどよな~……」


レイ・ブレイブ:

ニーナちゃんと勇者、しゃべることは出来るかしら~?



 OH...

 Holy shit...


 詰みです。対戦ありがとうございました。



「……」


:なんとか言えよ魔王様

:黙ってて草

:え、マジで声真似なの?!

:声真似ならそれはそれで驚愕なんだけどw

:ふぁ?! まじ声真似なん?!

:真似上手すぎひん?!


 

 ……レイの言う通り、我の声真似じゃ。


 我の声真似は、前世で習得した魔法『コエモシャル』。

 師匠にも「お前のコエモシャルの精度は魔界一だろうな… 子どもの遊びで使うような魔法をここまで高めたのはお前が初めてだよ…… はぁ…」って褒められたのじゃからな!


 そんな我の『コエモシャル』を見破るとは……!




「フッ……


 フフフ… フハハハハハハハハハ!!! よくぞ見破った勇者よ!

 我の完璧で隙のないパーフェクトでマーベラスな計画をよく見破った! 素晴らしい! 素晴らしいぞ!


 ……こんなに早く見破られるとは想定外じゃが、全然悔しくなんかないんじゃもん! 本当じゃもん!

 皆が混乱の渦に巻き込まれる中、後日ネタばらし配信しようと思ってたけど、全ッ然!くやしくなんか、ないんだからね!


 じゃが、我が宿敵として不足はないことは分かったのじゃ。僥倖ぎょうこうといえるじゃろう!!

 今日はこのくらいで許してやる! さらばじゃ!」


:悔しそうw

:心底くやしそうで草

:草

:草

:魔王様涙目じゃんwwwwww

:敗走魔王

:wwwwwww

:計画は完璧でしたか……?

:計画にも穴はあるんだよな…


レイ・ブレイブ:

わたし、められたわ~





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この配信は終了しました

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