Incantation

午前12時半

外を見れば ビルとビルのすきまに

白く光る 細い細い月

灯ひとつない 部屋の中

ふたりがけのソファに 毛布をくるまって

ひとり小さくまあるくなる


貴方を待つ時間は

永遠よりもずっと長い

貴方を待つ部屋は

闇よりもずっとずっと冷たい


貴方を絡めている赤い糸の先

握りしめているこの手を離して

貴方を自由にしたい


貴方にすがるように

貴方の手を握るわたしの手を緩めて

わたしも自由になりたい


そう思いながら 私は

呪いの言葉を月にかける



「貴方がこの手をふりはらって

 出ていく前に

 止まってしまえ

 わたしの心臓」と。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る