雪待ちの人
新吉
第1話 人待ちの人
とても静かで、どこか現実味のない夜だった。吐く息は白く、私はマフラーをしまっているタンスを思い出した。今度は必ずつけよう。街はにぎやかでクリスマスの飾りやキラキラの灯りがとても眩しい。もちろん街の音もうるさいはずなんだけど、私の耳には入ってこないのだ。
雪がいつ降ってもおかしくない。だから彼ではなく雪を待っていることにした。
「いつも早いな」
そりゃ、そうでしょ。待たせて嫌われたら嫌だ。静かな私の夜は終わりを迎えた、彼と二人になってしまえば、さっきまでのどこか冷えきった自分は顔を隠す。
「今日もお疲れ様」
「そっちもな」
「仕事柄しょうがないからね」
「休み合うの久しぶりだな、どこいこうか?」
「とりあえず飲みたい!」
「いいな、居酒屋入るか」
彼と別れる時私はまた顔を出す。おどろくほど冷たくなる自分がいる。しばらくは余韻が残る。酔ってるしね。消えるともう冷えてきて、手足の冷えが心まで侵食していく。もちろんお風呂やお布団に入るんだけど。熱して火照って醒めて冷えていく、その温度差で風邪を引きそう。
悩み出すと止まらない、そうなると眠れない。足が冷たいまま、こすりあわせてもんで、グーパーして。いくらモコモコしたあったかい装備もとたんにきかなくなる。
「会いたいだけ」
口に出してみたけど、正解なのかわからない。会いたいけど待っているときやわかれたあとの冷たさを思い出すと会いたくない。その方が正解なのかもしれない。
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