第2話 天使とタイマン

 糞うるさい喧騒の目立つ、とゆうか喧騒に汚れた人人人のどこを見てもアリみたいに溢れかえった横断歩道の交差点。

 そこで有り得ない現象が起こった。

 1人の男、何よりも目立ち何よりも危険なオーラを纏った身長230か250の大男が無効の点滅する青信号を見ながら周囲を横目に不思議そうな顔を浮かべていた。

 それもそのはずと言うべきか、数秒前まで喧騒に包まれていた横断歩道から男以外の人間や動物が消滅した。

 いや、厳密には人間と動植物が消滅したと言うべきか、、、


「転移して生物がいたら悪魔だ、と聞いたんだがね? どうにも人間に近い形状をしている、、、 それに一匹じゃ無かったのかい?」

「現状の説明を頼みたいんだが、良いだろうか?」


 誰一人いない静かだった交差点から色が消え全ての色が消え白黒の世界に転じた。

 と同時に、喧騒と言うのが正しいと思えるほどの壮大なプレッシャーが鳴り響いた。

 そして空間が歪む、横断歩道を超えて並ぶ無数のビル群含む全ての景色が斜めに裂けズレる。

 そのズレが不自然に縦へ引き伸ばされるとソコから這い出るように現れ悠然と地に降り立った華奢な男は、長い銀髪を靡かせ、、、

 ただ不思議そうに長身の男と別の何処かをそれぞれ二つの眼球で見詰める。


「情報に食い違いがあったとは思えないけど、、、 まあ良いか、殺して帰ったら聞いてみよう。 それじゃ早急に死んでもらおうかな?」


 暇そうな腑抜けた顔で、しかし造形物のような顔で先ず見たのは男の後方にあるビルの影。

 そこでブルブルと震える小さな影を狙い澄ました瞬間、男の姿が消失する。

 気づいて後方を振り向いた巨漢の目に映るのは倒壊した巨大ビルの残骸とソコに埋まる血濡れの肉片。


「状況が分からない、だが一つだけ分かったぞヒョロイの? お前ぇ、俺様の敵だな?」


 口が裂けそうなほど嬉しそうに歪められた顔をした男は、一瞬の内に華奢な男の懐に潜り込んでいた。

 低く下げられた巨体から放たれるアッパーが顎を砕きビルの破片を巻き上げて吹き飛ばすと、数秒して横断歩道を経た向こうのビルで巨大な穴が出来る。


「おい悪魔あぁぁぁぁぁ!!! テメェ何したか分ってるんだよなぁ⁉︎」

「変な呼び方はやめろ華奢野郎や? 俺様はなぁ! 呂技 三藤っつぅんだがよぉ! 俺様ぁ人類最強の男ぉ自負してんだよぉ!!」


 穴開きのビルが吹き飛び着地した男は今までの平坦で詰まらなそうな顔を消し去り憤怒に燃えた眼光を、絶大な殺意と共に巨漢へ向け叫んだ。

 それに巨漢、三藤はニヤケ面に膨大な殺意を込め啖呵を切ってみせた。


「華奢、、、なんだって? 良く聞こえなかったんだが、このルシフェルを侮辱したのか? 答えろ悪魔あぁぁぁ!」

「止めろっと言ったろうが華奢野郎!!」


 三藤の声と共に、ルシフェルと名乗った男が動く。

 挙動の一つで地が爆ぜ音をも超える速度で振られた拳は延長線上の建造物を分子にまで破壊する。

 その強力な一振りが三藤の頬を叩く、が、、、


「どうした? 大見得きって天使を自称した男が、まさか今程度とは言わんだろうな?」

「あり、えない、、、 有り得て良い筈がない!!」


 その強烈な一撃をモロに食らいながらも三藤は寧ろ呆れすら感じさせるような哀れみに満ちた目をルシフェルに向けると、ルシフェルの目にすら止まらない速度で腹を殴った。


『ズドッッッッッ!!』


 轟音と共にルシフェルの体が滞空を舞い、既に瓦礫の山と化した地の上空に浮かぶ大きな雲に大穴を開けて落下の勢いを残し地を凹ませた。


「なんだ、少しだけ期待してたんだがな、、、」

「、、、おい、調子に乗るのも加減しろよ?」

「っ⁉︎ なディッ⁉︎」


 残念そうに肩を竦めていた三藤の肩を後ろから叩いて、埃の一片も付着していないルシフェルが開いている右の拳で三藤の左頬を殴った。

 言葉が遮られるように吹き飛ばされた三藤は瓦礫を飛ばしながら足でブレーキ、300メートル近く深い傷を残して停止する。


「俺様を相手に手加減してやがったのかテメエェェェ!」


 怒鳴ると三藤は血は吹き飛ばし一瞬で懐に潜るとルシフェルの顔面を掴み前倒しに勢いよく腕を叩き落とした。


「ここからは、技を使うぜ?」


 そう呟いた三藤は急な視界の移動に無防備になった四肢の左手をガッチリと左で握り状態を起こすと同時に勢いのまま左手を持ち上げてルシフェルを頭上に持ち上げた、次の瞬間、、、

 勢いよく円を描くように左手が前へ振られ顔が三藤の顔と交差した瞬間、三藤の右腕が動く。

 人差し指と薬指の立てられた右腕が突き出されてルシフェルの両眼が潰される。

 グチャッとゆう鈍い音と共に引き抜かれた指が次はパッと開かれ後ろに振り下ろすと同時に勢いよく三藤の右足が2撃を放つ。

 ルシフェルの頭と首を膝で打った三藤は足を戻すと右の拳を握り3発、ルシフェルの胸を殴った。

 そして力が向く方向のまま、ルシフェルは次の瞬間に背を地に強打した。

 そして息が吐き出される瞬間、三藤の右足が喉を踏み気管を圧迫して妨害しつつ右の拳がルシフェルの顔面を強打した。

 地が吹き飛びルシフェルの花が折れるが、終わらない。

 そのまま左手を突き出して首を掴むと胸が三藤の顔に重なる程持ち上げ、腕をスライドさせ後頭部のサラサラした髪を掴むと右側へ引き寄せながら拳を腹に入れて手を離し左足を前に出しながら腕を回しつつ突き出してルシフェルを吹き飛ばした。


「どうした? 流石に痛いかルシフェルさんよ? 作り物みたいな顔も花が折れたら残念な門だなぁ?」

「挑発のつもりか? 消し去ってやろう。 まさか貴様程度の三流に能力を使わされるとは、、、」


 そう言ったルシフェルが立ち上がると、気付くときには三藤が瓦礫を巻き上げて吹き飛んでいた。

 その衝撃で左腕がポッキリ折れている。


「なんだ、今のは?」

「なにを惚けている?」


 その言葉と共に三藤が引き寄せられ、宣告したのを真似たようにルシフェルの左手が三藤の首を掴む。

 なぜか宙を浮遊するルシフェルの右足による蹴りで三藤は両の足が折られる。


「ここまでd、、、は?」

「どうした? 痛いかよ、、?」


 とどめを刺そうとしたルシフェルの右耳に三藤の右手で立てられた中指がずっぷりと刺さっている。


「調子に乗るなと、言わなかったか?」


 そう言ったルシフェルの右拳が三藤の顔面を抉り地に叩き落とす。

 そして降り立ったルシフェルが最後と言うように左の拳を上げ力を込めた。


「死ね、ウジが」


 そして振り下ろされた拳が、、、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る