異世界

ナマケモノ

第1話

 人間は進化をとげた。

 100、200年の間に突如、進化した。

 最初、てのひらから小さな火を出す程度。

 次第に水、雷、風、土を扱えるようになっていた。

 中には何も扱えない無属性が存在する。

 扱える大きさは個人差による。



 ジョンは黙って目の前の人物の話を聞いていた。 自分がどの属性を扱えるなんか知りもしない。

 目の前の人物がえらいのかペテン師なのかさえ知らない。

 物心つくころからジョンは親の顔すら見たことがない。

 この世界はどういう世界すら知らない。

 誰も教えてくれない。

 力の扱い方なんてわからない。

 だけど、ジョンは聞いている。

「いいか! お前は五属性のうち何を使える?」

「知らないです。」 ジョンは適当に答える。

「貴様は何なんだ? さっきから人の話を全く聞いておらん。」

「すみません。 あなたと会ったのは初めてなんです。 あなたがどういう人物なのかも知らないんです。」

「まぁ、いい。 特別だ。 最初から話してやる。」

 あぁ、空はきれいだな。 ボーとしていたんだけどな。 何で聞いているんだっけ…

 まぁ、いいや聞こう。

「名前はハロルドという。 ことわりから説明だ。 我々、人間は200年前は無属性だったそうだ。 突如、我々は進化した。 五属性のうちひとつか複数を扱えるものが出てきた。 実際に見せたほうが分かりやすいだろう。 見せてやる。」

 ハロルドは川に向かって、左手を開く。

 手のひらから小さな稲妻がはしる。

 数秒後には川に雷が放てる。

 ビリビリと音がした。

「おーすごいです。 ハロルドさん。」 ジョンは抑揚のない声で手を叩きながら言う。

「貴様、すごいと思っているのか。」 ハロルドは疑った目でみる。

「すごいですって。」

 ジョンは言葉をかえすが、あまり興味がない。 ただ、先のことを聞きたいだけだった。

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