第21話 美玖の紹介
二日後の木曜日、四連休の初日。
時間通り、朝八時に、美瑠が軽自動車で俺のアパートまでやってきた。
助手席には美玖が乗っていた。
美瑠は黒っぽいTシャツにデニムの白いショートパンツ、美玖は白いTシャツにインディゴブルーのショートパンツだ。
膝上まで足が見えるファッションを見るのは、二人とも初めてだ。
ちらっと見ただけだが、
「あ、ツッチー、私たちの生足、見た!」
と、美瑠が騒ぎ立てる。
「別に見られてもいいからそんな格好で来たんだろう?」
俺が冷静にそう返す。
「まあ、そうだけどね。つまんないな……。まあ、ふたりとも後で水着に着替えるんだけどね」
「……そういえば、清流がすぐ近くにあるって言ってたな……美玖も泳ぐのか?」
「はい、水着持ってきてますよ!」
笑顔でそう答える美玖……水着になることを嫌がっている訳じゃなさそうだった。
今の格好でも十分に魅力的な美女と美少女の姉妹だが、水着になるとどうなるのだろうか……。
「あ、ツッチー、いま変な妄想した!」
「なんだよ、変な妄想って!」
今度はちょっと冷静に返せなかったので、二人に笑われた……美玖は少し恥ずかしそうな笑顔だったが。
ここで近くの駐車場に止めてあった俺の車に乗り換える。
中古だが、四駆のワゴンタイプなので、美瑠の軽自動車よりは快適なはずだ。
俺が運転し、助手席に美瑠、後席に美玖が乗り込む。
荷物は後ろにたっぷり乗せられる。
そして出発。最初の目的地は、先輩や河口との合流地点であるショッピングセンターだ。
季節は真夏、幸か不幸か薄曇りなので、日焼けは今のところそれほど心配なさそう。
それでも、相当暑いことには変わりないので、クーラーをガンガンかける。
「美玖、冷房の風が冷たすぎたら言ってくれよ」
後席の美玖に声をかける。
「あ、はい、大丈夫です」
「ちょっとツッチー、どうして隣にいる私には聞いてくれないの?」
「いや、みるるは寒かったら遠慮せず言ってくるだろうと思って」
「ひどい、
ちょっと(冗談っぽく)拗ねる美瑠。
いつものインドアとは違い、車で移動しているというだけで、そんな会話が楽しく思えた。
そして八時半過ぎに、予定通りショッピングセンターに到着。
浜本先輩の車に、真理姉さんと河口が乗ってきたようだ。
ここでビールやジュース、バーベキューの食材なんかを調達することになっている。
「ツッチー、5分遅刻だぞ……!?」
俺たちを見かけた浜本先輩が、文句を言おうとして固まった。
河口も、目を見開いて驚いている。
「あの……はじめまして、美玖と言います……」
恥ずかしそうに挨拶をする、超絶美少女の女子高生、美玖。
浜本先輩と河口は、驚愕の表情のまま顔を見合わせた。
「ちょっと、浜本さん、ぐっち、その反応はなんですか?」
笑いながら美瑠が二人を問い詰める。
「こんにちは。みるるの妹さんね……私、広末真理って言います……ミクちゃん、すごく可愛い! 私の妹にしたい!」
オーバーサイズの白のTシャツ、黒のスキニーパンツというおしゃれなファンションの真理姉さんは、早くもテンションが高い。
「えっと……本当にみるるの妹!?」
「むちゃくちゃ可愛い……」
二人の男性からは、心の声がダダ漏れだ。
「実の妹ですよ、浜本さん。まあ、タイプが違うとはよく言われますけど」
そう、美瑠はどちらかというと凜々しい感じの美女で、美玖は髪の長い癒やし系の美少女だ。
清楚でおとなしそうな感じもあり、快活な美瑠とは雰囲気が異なる。
「みるるの妹で、ミクちゃん、か……みるると同僚の河口です、よろしく……ツッチー、ミクちゃんとも前から知り合いだったのか?」
河口が、まだ驚いた顔のまま俺に聞いてきた。
「ああ、まあ、一応……」
「ちょっと、それ、どういうことだ!?」
浜本先輩も混乱している。
「ま、まあ、それはおいおい……それよりも、食材買いに行きましょう!」
俺は話をはぐらかすようにそう言った。
そして美瑠は馴染みのある男性社員や真理姉さんと行動していたのだが、人見知りする美玖はずっと俺と一緒だったものだから、余計に疑いの目を(軽くだが)向けられることになるのだった。
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