濃紺と銀色−2
「はい負け決定。じゃあとりあえず、星野サマこちらをどーぞ」
銀色の紙に包まれた板ガムを一枚、その中の一人に差し出され、勢いにおされて受け取ってしまった。
「なに、これ?」
「王様ゲームッ! でもスティック系の菓子が何もないので、かろうじて形状が棒っぽいこれでやりまーす」
「……いつの間にわたしも参加?」
「めっちゃ盛り上がってたゲームが自分の真横で開催されていたことに、暑さで気づかない星野のボケた脳が悪い。ということで、王様は陽太くんです」
さあどうぞ盛大にポッキーゲームを! とはやし立てる彼らと、手のひらでじんわりやわらかくなっていくガムを前にして、わたしは焦り、思わずそれをパス! と叫んで陽太に向かって放り投げた。
宙を飛ぶ銀色のガムを受け止めた陽太は、呑気な顔でガムを包んだ銀紙を妙に丁寧に剥きながら、ちらりと私の顔を見上げた。
「……何よ」
「星野さあ、こんなもんすんなり前歯で噛みきれるだろ。さあ、この目の前の王様を信じてごらーん」
ガムのうんと端を前歯で挟んでこちらに向けた間抜けな笑顔の先で、暑さに一気にふやけた板ガムがグニャリと曲がって彼の口元に垂れ下がった。
「うおっ!?」っと焦ったようなくぐもった声を、ガムをくわえたままの唇の間からこぼした陽太の腹を、私は一発、けっこう力を込めて蹴り飛ばした。
ごふっ、と音を立てて、板ガムがまた宙を飛ぶ。
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