薄荷と王様

梶マユカ

濃紺と銀色


 真夏の夜空に星を見る。



 字面は綺麗だけれど、実際にそれをやろうとすると。



「今夜って天体観測するために、泊まり込んだんじゃなかったっけ」



 制服のスカートの裾から風を仰ぎ入れながら、私・星野凛は隣でおでこにコーラの缶を当てている、クラスメートの斎藤陽太に言った。



「多分誰もそれ覚えてないだろ、もはや」



「だよね。しっかし、濃紺のスカートまじ暑い。熱吸いすぎ。太陽とっくに沈んだってのに」



「星の熱なんじゃね? 星野なだけに」



「わー何それロマンティック。キモい。しかもうまいこと言ったつもりのところが尚更キモい」



「うるさい」



「ていうかこれ、来年から完全に夏休み中の使用が禁止になる気がするんですけど、屋上」



「先生が暑さで真っ先にぶっ倒れたのがいけない」



 たくさんの高校生が騒ぐ夜の校舎の屋上は、異様なほど暑い上に熱い。

手持ち花火の白い煙が、あっちこっちで夜の空気になにか書き散らしては消えていく。



 盛り上がりすぎてノイズ化した声声声声声が、耳元で蝉並みにわんわんと唸りを上げる。



 そのせいで、何やらゲームに興じていたらしき友人から何を言われたのか、私は一瞬、完全に聞き逃した。

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