第4話「ゴネてもいいことないですよ?(後編)」
『────────………………うるっせぇ』(ボソッ)
(え?……いま、なにか────)
チラリと女神の顔を窺うレイル。
(……いや、それよりも催促だ! 何かいいスキルを貰わなきゃ!!)
「お願いします!! 女神様!!」
お願いお願いお願い!!
お願ーーーーーーい!!
「お願いしまーーーーす!!」
『うるせぇ……』
ぶちっ………………。
『うるっせぇぇぇえええええ、つってんだよ、ごらぁぁあああああ!!』
カッ────────!!
「ひゃぁ?!」
しつこく食い下がるレイルについに女神がブチ切れる。
今までは荘厳な雰囲気を纏っていたというのに、今では両目から光を、ビカーー!! と発射してレイルをめちゃくちゃ睨んでいる。
まるで邪神。
そして、止まらない!!
『うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ!』
「ひえぇえ? なになに? 何で怒ってんの?!」
『うるせぇぇぇえええええ!!』
うるっせぇぇぇえええんだよぉぉおおお!!
この下等生物がぁぁぁああああああああ!!
バーーーーーーン!!
と、部屋中を揺るがす大音響!
神像がはじけ飛び、天井や床には罅が奔る。
「「ひ、ひぇぇええ!」」
「「め、女神さまがお怒りじゃぁああ!」」
余波を食らって吹き飛ばされる神殿騎士と神官たち。
「「「お、お助けぇぇええ!」」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ! と、地下室に地響きが広がるに至り、「逃げろぉぉぉお!」と、教会関係者は散を乱して撤退。
「ひ、ひぇぇ……!」
そして、これにはレイルも腰を抜かしてしまい、一人地下に取り残される。
『こぉおんの、下等生物がぁあ……。いい顔してやってたら調子に乗りやがってぇぇぇえ!!』
「ひぃ! ご、ごめんさい」
反射的に謝るも、もはや女神は悪鬼のごとし表情。
『なぁぁぁぁにが、ごめんさーい、だ!!』
ズンッ!!
床に亀裂の入るほどの強烈の一歩!
『なぁぁぁにが、『手料理』はいらないだ!!』
「ひえ?!」
『なぁぁぁにが、ちょッ早だ! なにが、適当だ!! あぁぁっぁあんだごらぁぁああああ!!』
ズンズンズン!!
「ひ、ひ、ひぃぃい!」
『ぶっ殺すぞぉ、クソガキゃぁぁっぁああああああああああああ!!!』
ズドォォォオオン!!
クレーターを穿つほどのスタンプがレイルの股間のすぐ下に作り上げられる。
『女神さん、激おこじゃあっぁあああああああああああああ!!』
「ひゃあああああああああ!!」
女神キレさせるとか、どんだけ!!
すぅぅ……。
『────テメェにくれてやるスキルなんざねぇ、
ピシャーーーーーン!!
女神を顕現させている空間から電撃が迸る。
その姿の何と恐ろしいことか!
ババン! バババン!! と、雷が天井やら床やら壁を焦がして大地が揺れる!
レイルも漏らさんばかりに怯えていたが、
「いや、ダメだ!!」ここで引き下がるわけにも────。
「ご、ごめんなさい! 怒らせるつもりは────……ただ、戦闘用のスキルが欲しくて」
『すぅぅ…………──誰がやるかぁぁああ!
「ひぃぇぇえ?!」
ボッッッッッカーーーーーーーーーーン!!
ついに崩落した教会地下室。
レイルはこの衝撃とともに放り出されて教会の外に転がっていく。
「うぎゃああああああ!!」
煙を吹きながら、燻りゴロゴロゴロと、転がる様に放出されたレイル。
もう、生きているのが不思議なくらいだ。
「「ひえぇぇぇ! 教会が──……!」」
「「女神様の御乱心じゃぁぁああ!」」
むき出しになった教会地下。
グルグルと渦巻く魔力の渦は、まるで地下室を地獄のようにも見せており、その中央に立つ女神はまるで悪鬼のごとしだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「ひぇぇぇえ……教会は──人類は終わりじゃぁぁあ!」
腰を抜かした高位神官が頭を抱えている。
そして、何とか五体満足で飛び出したレイルと、それを睨みつけている女神。
『てめぇ、二度と来るんじゃねぇぇぇえ!! うがぁぁああああああああああああああ!』
ビリビリビリと空気が震える。
そして、
ぶっ殺してやるぞ、下等生物ぅぅぅぅううううう!!
うがぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!
がぁっぁああああああああああああああああああああああ!!!!!
『ぁぁぁあああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛──────…………はい。では、次の者』
………………ニッ~~~コリ。
そして、ひとしきり叫んだ女神は、まるで何事もなかったかのようににこやかに微笑む。
教会の地下に渦巻いていた地獄のような煙と魔力の迸りは露と消え、キラキラと輝く荘厳な空間へと一瞬にして戻る。
あの女神も、いつもの柔和なアルカイックスマイルを浮かべて慈母のごとき表情に戻っていた。
しーーーーーーーーーーーーーーーん。
だけど、さすがに誰も動けない。
教会関係者も腰を抜かし、今日スキルを貰う予定の新成人たちも茫然自失。
その親や関係者、または有用なスキルを獲得したものをスカウトするための様々な職域の人間たちも口を開けてあんぐり……。
もちろんレイルも────。
「ご、ごめんなさい……」
「そ、それでは。スキル授与式を続ける…………」
ガクガクブルブルと膝を震わせた高位神官が職業意識だけで立ち上がると、フラフラとしながら教会の地下へと戻っていく。
レイルだけはそのまま取り残され、また新成人が一人、また一人と地下に呼ばれてはスキルを受け取り戻ってきた。
喜ぶ者、
落胆する者、
微妙な顔をする者、
そして、後に残されたのは女神を怒らせた────……レイルだけ。
え???
「……お、俺のスキルは──────?」
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