対ゆっくり用毒薬
@Darkmattervoid
第1話 試作品
「完成だ」
そう言って、友人であり、この薬の開発者であるユウヤが小さな立方体の物体を渡した。
「上にあるボタンを押した後に投げると作動する、テストをしてきてくれるかな?僕はまだ他にやることがあるから。それと、あまあま寄越せと言ったらそれをゆっくりに当てないように投げろよ?」
仕方ない、行ってきてやろう。
「分かった、行ってくる」
上着のポケットにそれを入れると、近くにある公園に向かった。そこはゆっくりがよくたむろしていたりゆっくりプレイスだの言ってダンボールハウスを置いて暮らしてたりするところだ。だが、近所の人曰く、「芽が出ても潰されてたり、花が咲いても千切られたりと、花壇が荒らされて困る」だの、「排泄物の影響で蟻とかが集ってて気持ち悪い」だの、「他人の目を気にせずすっきりーとか言って子作りみたいなことしてて小さい子の教育に悪い」だの、評価は最悪だ。一斉駆除をしようにもそれに割く予算がないためお手上げ状態だ。
「まあ良い、これであの公園からゆっくりが消えるなら御の字だ」
公園に入ると、やはり居た。後頭部の赤いリボンと、特徴的なわさわさした揉み上げからして、れいむ種で隣に居る黒い帽子と金髪の奴がまりさ種だろう。そして周りには豆サイズの奴らがおちびと言ってる小さなれいむ種とまりさ種だな。まあ駆除するし関係ないけどな。
「おいくしょじじい、しようりょうとしてあまあまをたっくさんよこすのじぇ」
まりさが訳の分からないことを言うと、それを皮切りに小さい奴らが
「あみゃあみゃちょうらいにぇ!」
と喚く。
「見たところ、たくさん小さいのが居るな……前の近所の集まりの時に聞いてたより多い」
そうなのだ、1週間前の集まりの時には6ほど居ると聞いてたのだが、目の前に居るのは9匹ほどの赤ゆだ。
「れいむはこだくさんでたいへんなんだよ!だからあまあまをちょうだいね!」
よし、仕掛けてやろう。
「子沢山かあ……大変だな。良いだろう、甘々とやらをあげてやるぞ!」
多少演技も入れて言う。その後、ポケットから例の立方体の物体を取り出すと、ボタンを押してゆっくりに当てないように投げる。そうすると、驚くべき変化が起きた。謎のガスが噴出したのだ。
「ゆっ!あまあまなけむりしゃん!」
なるほど、ゆっくりにとっては甘い煙と感じるように作られているのか……
「しあわせぇ~!」
煙を吸うと、特有の台詞を言った後に、漏らす、所謂うれしーしーをしたのだ。
「ちあわちぇ~!」
おちびとやらも同様だ。
さて、これで様子見だ。これでゆっくりが死ぬなりしなければ、失敗作だ。
観察を始めて10分後、変化が起きた。あの煙を浴びたないしは吸ったゆっくりのうちの1匹の髪が突然抜け始めたのだ。
「ゆ?れいむのもみあげしゃんがぁぁぁ!」
「おまえはゆっくりできないのぜぇぇぇ!」
おお憐れ憐れ、奴らの夫婦の絆なんて髪がなくなった途端に破綻してしまうのだ。滑稽すぎてニヤニヤが抑えられねえ……
だがそんな言い合いをしてるうちに、まりさもおちびも禿げた。
「まりちゃのおうっごんのヘアーしゃんがぁぁぁ!」
「れいみゅのさらさらヘアーしゃんがぁぁぁ!」
あの薬がゆっくり同士の殺しあいを促す薬ではないことは知っている。もう少し観察しよう。そう決めた途端、全てのゆっくりのお飾りが黒く変色したかと思ったら、微風によって跡形もなく消えたのだ。
「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!おかざりがないぃぃぃぃ!!」×11
「御愁傷様~」
そう言って、自販機で買ったコーヒーを飲む。俺たちの研究データが正しいならこれで終わるはずがない。
「ゆ?あんよしゃんんんん!かもしかしゃんもビックリのはやさをもつあんよしゃんがぁぁぁぁぁ!」
そう、俺とユウヤが作ったあの試作品の薬は、ゆっくりの中枢餡を即時破壊する物質を薄め、即時破壊ではなくじわりじわりと破壊していく仕様なのだ。また、それによって永遠にゆっくりした後に腐りにくく、次のゆっくりの餌となり食べたゆっくりが同じように苦しんで死んだ後にそのゆっくりを別の奴が食べてと鼠算方式で殲滅できるのだ。
余談だが、髪が抜けたりお飾りが融けたり、足が焼かれた時みたいに動かないと言った症状は研究の過程で出来てしまった副次的な効果に過ぎない。あの箱はあくまで、薬品を煙として散布するための物質であり、薬品が出た後に回収することで再利用できる。因みに足が動かなくなった後は中枢餡が毒薬によって破壊され死んでしまうのだ。これは個体が大きければ時間がかかるが、赤ゆなら足が動かなくなって5分ほどで死に至る。
「俺からのプレゼント、楽しんで貰えたかな?」
「どぼぢでこんなことするのぉぉぉぉぉぉ!」
ふっ、どうして……か。
「恋人(ラヴァーズ)の逆位置、間違った選択。俺に甘いものを寄越せと言ったのが間違いなのだ」
右のポケットからウェイト版タロットカードを取り出してれいむに見せる。
「俺と話していて良いのかい?大事なおちびが餓えて死んでしまうぞ?」
まあ、足が動かない奴に言ったところで意味はないだろう。それに俺の予測ではおちびはもう死ぬ。
「もっちょ……ゆっくち……」
まりさ種の1匹がそう言ったのを皮切りに、他の赤ゆがどんどん白目を剥いて死ぬ。
「おちびちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「死んでしまったねえ……死神(デス)の正位置、死すべき運命……」
無作為におちびの1匹を掴むと、目から砂糖水を流しているれいむを無視して帰る。
To Be Continued
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